Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第126巻第7号

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総説
着床前遺伝学的検査(PGT)をめぐる精神医学領域の倫理的課題
新村 秀人1), 石黒 浩毅2)3)4), 石川 博康5), 稲生 宏泰6), 佐々木 愛子7), 尾崎 紀夫8)
1)大正大学臨床心理学部
2)山梨大学大学院総合研究部医学域臨床遺伝学講座
3)山梨大学大学院総合研究部医学域精神神経医学講座
4)山梨大学医学部附属病院遺伝子疾患診療センター
5)医療法人弘仁会島田病院
6)東京都立松沢病院
7)国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター産科/遺伝診療センター
8)名古屋大学大学院医学系研究科精神疾患病態解明学
精神神経学雑誌 126: 429-441, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-072
受理日:2024年2月16日

 着床前遺伝学的検査(PGT)とは,体外で受精させた胚の一部を生検して,その細胞のDNAを解析する方法である.PGTを行い,重篤な遺伝性疾患をもたない可能性が高い胚だけを子宮に移植する場合,「重篤」の定義をどうするのかが倫理的な問題となる.また,PGTを行うこと自体の是非・条件についてさまざまな議論がある.精神医学領域では,遺伝性疾患に伴う精神疾患を中心にPGTの適応を判断していくことになろうが,一般の精神疾患の多くは多因子遺伝であり,表現型や経過が多彩であることに留意すべきである.遺伝カウンセリングにおける精神科的支援や,精神疾患教育とも連動した遺伝教育をどのように行っていくのかも考えなければならない.現在,日本では,PGTの適応についての法規制がない.これまで,日本産科婦人科学会の見解と各医療機関の倫理審査で対応していたが,2022年に「重篤性」の定義が変更(拡大)された.重篤性の判断が難しい拡大症例については,(i)生殖医療専門医,(ii)臨床遺伝専門医,(iii)当該遺伝性疾患の専門医が合同で症例ごとに申請することとなり,また,(iii)として,精神科専門医から申請された症例については,日本産科婦人科学会より日本精神神経学会に審査協力依頼がなされ,当学会医療倫理委員会で検討し,協力していくこととなった.本稿では,PGTをめぐる精神医学領域の倫理的課題について検討する.

索引用語:着床前遺伝学的検査, PGT, 倫理, 精神医学, 遺伝性疾患>
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