Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第126巻第1号

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特集 日常臨床における精神療法的アプローチ― 時間的制約のなかで何ができるのか―
時間的制約のなかで何ができるのか―精神分析的観点から―
吾妻 壮
上智大学総合人間科学部心理学科
精神神経学雑誌 126: 50-56, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-008

 本稿では,精神分析的観点から,時間的制約のあるなかでの精神療法の可能性について考察する.精神分析的な治療作用には,支持的な要素,知的理解の要素,体験的な要素が含まれ,それぞれに対応する精神分析的な技法がある.支持的な技法は時間的制約のある外来においても適切に用いることは可能である.また,心の力動の理解を目的とする解釈の技法も,ある程度用いることができる.一方,転移―逆転移状況を扱うことは,その探索を十全に行うための時間がない場合,困難であるか,部分的に可能であるにすぎない.転移―逆転移技法をうまく扱うことができるためには,転移―逆転移が治療プロセスのなかで十分に展開されることが許容される必要があるが,それは限定的な設定においては避けようがなく難しいことである.しかし,支持的技法および解釈の技法を続けていくことで,多くの患者の精神的な健康に相当の効果をもたらすことは可能であろう.

索引用語:精神分析, 支持的技法, 解釈, 転移-逆転移>
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