Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第126巻第1号

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特集 日常臨床における精神療法的アプローチ― 時間的制約のなかで何ができるのか―
悪循環を打破する逆説的介入
新村 秀人
大正大学心理社会学部/慶應義塾大学医学部精神神経科学教室
精神神経学雑誌 126: 43-49, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-007

 時間的な制約のある日常臨床における精神療法的アプローチの1つとして,短時間で変化を引き起こしうる逆説的介入を紹介する.逆説的介入は,ブリーフセラピー,システム論的家族療法,森田療法などで定式化されているが,日常診療においても広く用いることができるものである.「患者が症状を取り去ろうとしてあがいているその努力がかえって症状を強化している」という悪循環過程を見いだした場合は,その努力を止めさせるように逆説的に介入するとよい.逆説的介入とは,悪循環に陥っている患者が<ダメ>と思っていること(「症状」)に対し,治療者がまったく逆にそれは<良い>と肯定して無力化し,結果として「症状」を解消する方法である.同時に,治療者が患者と綱引き状況(悪循環)に陥っている場合,介入を逆説的に転換すると綱引きがゆるみ,治療が展開しやすくなる.架空症例および既報症例を呈示し,逆説的介入の具体的な使い方を紹介した.逆説的介入を行う際のポイントと注意点としては,(i)患者の生活の様子を具体的につかむ,(ii)生活のなかで生じている悪循環をつかむ,(iii)強迫的な不安がある場合は逆説的介入が効果的である,(iv)不安の背後にある内発的動機(健康な力)をつかむ,(v)シンプルな助言(行動処方)をする,(vi)ユーモアの感覚を大切にする,(vii)ひきこもりタイプの患者では,まず内発的動機(健康な力)を育てるである.逆説的介入は,時間的制約のある日常診療においてこそ力を発揮すると思われる.

索引用語:悪循環, 逆説的介入, 精神療法, 短時間>
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