時間的制約のある精神科外来診療で効果的な精神療法を実施していくことは工夫を要する点である.一般的には,薬物療法の効果や副作用の確認を行い,調整すると同時に,患者の訴えを傾聴し,そのときの問題点を明確化してアドバイスするという形になっていると思われる.著者は,患者が,受容され,癒され,また外界に出ていく準備を整える港のような機能を果たすことが重要と考えている.社会生活スキルトレーニング(SST)では本人の希望を中心において,それを実現するためにはどのようにしていくとよいのかという視点がベースにある.日常診療のなかでも,日常生活の様子を聞くなかで,そのなかでどうなったらよりよいのかという視点をもつことで,患者と共同した目標をもちやすく,薬物療法の効果が少なかったり,薬物療法を希望しない患者に対応するときにも,役立っている.また環境,特に周囲の人間関係で症状が変動する患者では,SST本来の対人関係のアセスメントと介入を個人SSTを用いて展開することもできる.今回3つの事例を紹介しながら,SSTのなかの考え方や技法をどう活かしているのかを伝えたい.
精神科外来で社会生活スキルトレーニング(SST)の考え方や技法を利用した試み
北里大学北里研究所病院精神科
精神神経学雑誌
126:
37-42, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-006
https://doi.org/10.57369/pnj.24-006
<索引用語:精神科外来, 精神療法, 社会生活スキルトレーニング(SST), 希望志向, 対人関係>