Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第126巻第1号

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特集 日常臨床における精神療法的アプローチ― 時間的制約のなかで何ができるのか―
時間の区切れのなかに精神療法的関係性の本質を潜ませる
新宮 一成
京都産業大学保健診療所/奈良大学総合研究所
精神神経学雑誌 126: 30-36, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-005

 現代の日常の精神科臨床においては時間的制約を意識せざるをえない.その際の重要な視点は,面接を区切る際に,精神療法としての質をどう保つかということである.Freud, S. は神経症の成り立ちを考える際に,患者の社会生活において了解できる因果性とは別に,「事後的な」時間性を以って働く因果性が心のなかにあることを重視した.すなわち,一見して生活のなかに現れている順行的な因果関係,その原因がさかのぼって幼児期の記憶を賦活するという逆行的な因果関係,そしてその賦活が原因となって現在の症状が生まれているという再順行的な因果関係である.精神療法において,患者が自らの症状の原因を熟考してゆくなかでも,時間の遡行が生じる.この遡行は,症状形成の事後性と別のものではない.したがって,治療面接の区切れを,症状形成の因果関係の心のなかでの成立として示すことによって,自己の苦悩を理解できたという感覚が患者のなかに定着する.この契機を基にして次の面接に移ることにより,時間的な制約を考慮しつつも,精神療法をその本質へと深めてゆくことが可能である.

索引用語:時間的制約, 面接の区切れ, 事後性, 幼児期体験, 精神療法の本質>
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