Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第126巻第1号

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原著
COVID-19流行による精神科受診患者の自殺関連事象の変化について―北海道大学病院における後方視的研究―
内藤 大1), 豊田 直人2), 三井 信幸3)
1)北海道医療センター精神科
2)八雲総合病院精神科
3)北海道大学病院精神科神経科
精神神経学雑誌 126: 20-29, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-004
受理日:2023年8月29日

 【目的】COVID-19流行に伴い日本における自殺者数の増加が報告され,脆弱性の高い個人への影響が懸念される.本研究では精神科に通院中の患者を対象に,COVID-19流行下特有の自殺の危険因子および自殺関連事象の特徴を明らかにするために後方視的調査を実施した.【方法】北海道大学病院精神科神経科受診患者を対象に,2004年4月23日から2019年12月31日までの期間に自殺関連事象が認められた症例をCOVID-19流行前群とし,2020年4月1日から2021年8月31日に自殺関連事象が認められた症例をCOVID-19流行下群に分類した.その後,上記2群の背景因子,診断,自殺関連事象の方法等について検討した.【結果】COVID-19流行前群が65例,COVID-19流行下群が23例となった.背景因子および診断には有意差はなかった.初診時のM. I. N. I. screenの比較では,自殺念慮と興味関心の低下は共通の特徴であり,COVID-19流行下では全般不安の代わりにパニック発作の割合が高い傾向がみられた.COVID-19流行前とCOVID-19流行下では自殺企図の手段に統計的に有意な違いが認められ,過量服薬が44.6%から21.7%に減少し,縊首も26.2%から13.0%に減少した一方,飛び降りが13.8%から26.1%に増加し,飛び込み,服毒,一酸化炭素中毒も認められるようになった.【考察】COVID-19流行下では自殺企図手段が多様化しており,COVID-19流行前にはほとんど認められなかった方法での自殺関連事象が認められた.自殺予防という観点からは,自殺企図手段へのアクセスの制限は研究の難しさはあるものの,非常に有効な自殺予防方法の1つと認識されており,COVID-19流行下で自殺企図手段に変化があるとすれば,自殺予防の方策も見直す必要があると考えられる.

索引用語:自殺企図, COVID-19>
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