Advertisement第118回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第124巻第8号

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原著
物質使用障害患者における初診3年後の断酒断薬予後―アルコール,違法薬物,処方薬市販薬の乱用物質別による断酒断薬継続期間への影響因の検討―
板橋 登子, 小林 桜児, 黒澤 文貴, 西村 康平
神奈川県立精神医療センター
精神神経学雑誌 124: 515-532, 2022
受理日:2022年4月13日

 【目的】物質使用障害において患者の主な乱用物質により生活背景や臨床像が異なると指摘されているが,治療予後を比較した報告はいまだ少ない.本研究では,依存症専門外来で実施した予後調査をもとに,断酒断薬継続期間と影響因について乱用物質で群分けをして比較検討を行った.【方法】2015年5月~2018年4月に神奈川県立精神医療センター依存症外来を初診し,初診3年後予後調査に回答が得られた397名(男性286名,女性111名,平均年齢44.2±11.9)の物質使用障害患者を対象とした.乱用物質によりアルコール群(n=223),違法薬物群(n=129),処方薬市販薬群(n=45)の3群に分け,3年間で最長の断酒断薬継続月数の中央値をKaplan-Meier法により推定し,log-rank検定による比較を行った.再飲酒再使用への影響因は初診時の基本属性および質問紙尺度得点,3年経過時の状況を説明変数としたCox比例ハザードモデルにより検証した.【結果】断酒断薬継続月数の中央値の推定値はアルコール群6ヵ月(95%CI 3.83~8.17),違法薬物群32ヵ月(95%CI算出不能),処方薬市販薬群12ヵ月(95%CI 9.39~14.61)で,違法薬物群が他の2群より有意に長かった.再飲酒再使用に関して,アルコール群は過去の依存症専門治療歴,通院期間,自助グループ参加期間が抑制因子,自殺関連行動がリスク因子であった.違法薬物群は男性,小児期の慢性身体疾患・いじめ・養育放棄の体験,初診以降に経済的自立を失う体験が,処方薬市販薬群は小児期の親との離別・家族の慢性身体疾患の体験,初診時の信頼感尺度の「不信」得点の高さ,自殺関連行動がそれぞれリスク因子であった.【考察】乱用物質の入手が比較的容易なアルコール群および処方薬市販薬群と違法薬物群とで断酒断薬継続期間が異なっていた.再飲酒再使用の影響因が3群でそれぞれ異なり,治療継続のための関係構築,自助グループへの動機付け,社会生活自立への支援,小児期逆境体験からくる不信感を緩和するかかわり,希死念慮への対応など,各群の治療課題が示唆された.

索引用語:物質使用障害, 依存症専門外来, 長期予後, 断酒断薬継続>
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