Advertisement第118回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第124巻第5号

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連載 ICD-11「精神,行動,神経発達の疾患」分類と病名の解説シリーズ
各論⑭
2010年分類に基づいたICD-11のてんかん分類―1989年,2017年分類との比較―
兼本 浩祐
愛知医科大学精神科学講座
精神神経学雑誌 124: 349-356, 2022

 ICD-11のてんかんの項目の分類は,水準の違う分類項目が並列して並べられ,さらに原因分類と症候分類も並列して並べられているため,混乱した印象を与える.この混乱を理解するためには,てんかん分類における異なった水準,原因分類と症候分類,てんかん大分類の近年の改訂の3つを予備知識として頭に入れておく必要がある.てんかん大分類の大きな改訂は,1989年,2010年,2017年にそれぞれ行われており,ICD-11は基本的には2010年分類を反映した形で改訂されていて,ICD-12が出るとすれば,臨床的な使い勝手の悪さから評判の芳しくなかった2010年分類は破棄されて,2017年分類に基づいた再改訂が行われる可能性が高い.本稿においてはICD-11のてんかん分類の構図を理解するために,まずは必要な予備知識を説明し,その後に,ICD-11の各項目を解説した.

索引用語:てんかん分類, 1989年分類, 2010年分類, 2017年分類, ICD-11>

はじめに
 ICD-11のてんかんの項目の分類は,ミシェル・フーコーの『言葉と物』の冒頭でボルヘスを引用して記述されている中国のある百科事典での分類と似たような混乱があることをまず意識しておく必要がある.つまり水準の違う分類項目が並列して並べられ,さらに原因分類と症候分類も並列して並べられている.この混乱を理解するためには,てんかん分類における異なった水準,原因分類と症候分類,てんかん大分類の近年の改訂の3つを予備知識として頭に入れておく必要がある.てんかん大分類の大きな改訂は,1989年,2010年,2017年にそれぞれ行われており,ICD-11は基本的には2010年分類を反映した形で改訂されていて,ICD-12が出るとすれば,評判の芳しくなかった2010年分類は破棄されて,2017年分類に基づいた再改訂が行われる可能性は否めない.本稿においてはICD-11のてんかん分類の構図を理解するために,まずは必要な予備知識を説明し,その後に,ICD-11の各項目を順次解説する.
 なお,文献においては,『てんかん学ハンドブック第4版』4)を参照されたい.また,以下で1989年分類2),2010年分類1),2017年分類5)としたものはいずれも国際抗てんかん連盟による分類である.てんかん大分類の名前については,図2を参照してもらいたい.
 なお,ICD-11におけるてんかんの分類項目の邦訳は日本神経学会が担当しており,本稿では現時点での暫定訳を用いている.

図2画像拡大

Ⅰ.ICD–11のてんかん分類を理解するための予備知識
1.てんかん分類の3つの水準―てんかん発作,てんかん症候群,てんかん大分類―(図1
 てんかん発作とは,例えば,欠神発作,ミオクロニー発作,強直間代発作,複雑部分発作(現行では焦点意識減損発作)といった具体的な症状として目に見える発作のことである.てんかん症候群とは,いくつかのてんかん発作の組み合わせと典型的な脳波所見の組み合わせによる電気臨床症候群(electro-clinical syndrome)と呼ばれている症候群を指す.例えば,ミオクロニー発作と強直間代発作があり,脳波上で3~4c/sの多棘徐波を伴う思春期発症のてんかんであれば,若年ミオクロニーてんかんというてんかん症候群と診断することになる.てんかん大分類は,いくつかの近縁のてんかん症候群の上位概念であり,例えば若年ミオクロニーてんかん,若年欠神てんかん,小児欠神てんかん,覚醒時大発作てんかんなどをまとめて,特発性全般てんかんと1989年分類では呼んでいた.
 このなかで,症候群分類は,最も安定した分類であり,20世紀後半からほぼ変化がない.これに対して,てんかん発作は,発作脳波同時記録で見えたままを記述するという立場と,1つの一貫した病態として発作をとらえるという立場が統一されていないための混乱が,最新の2017年分類では特に顕著になっており,このため,目に見える発作の分類でありながら,重大な変更がその分類には加えられてきた.例えば,1989年分類においては,凝視→口部(あるいは言語)自動症→発作後もうろう状態という一連の起承転結からなる複雑部分発作は,海馬を巻き込む焦点てんかんを示唆する典型的な発作型として提示されていたが,最新の2017年分類では,意識減損の有無で焦点発作の症状はまずは分解され,自動症は自動症として,例えば発作の最中の一側の強直はそれとして,バラバラに評価すべきとされている.ところが,その一方で,てんかん性スパスムという乳児の発作においては,脳波所見を含めた一定の病態生理を含む全体像が発作として採用されていて,2017年の発作分類は分類の原理において一貫性を欠いている.
 てんかん大分類の問題はICD-11の分類に多大な影響を与えているので別途項を改めて論ずる.

2.原因分類と症候分類
 I.3でも再度ふれるが,てんかん大分類の最初のひな型となった1989年分類は,症候性と特発性,部分と全般という2つの軸でてんかん全体を整理しようという非常に明瞭なコンセプトに基づいていた.部分・全般というのは,てんかん発作が開始する時点で,脳の一部からてんかん性放電が開始しているのか,それとも脳の両側に同時ないしは同時に近いくらいのタイム・ラグでてんかん性放電が認められるかという理論上の推定であり,当然のことながら,例えば脳腫瘍や交通事故など脳の一部の損傷があるものは,部分てんかんであり,遺伝的素因に大きく依拠しててんかん発作が出現するものは,全般てんかんになることが予想されていた.この2軸による4分割は,DSM-IIにおける器質精神症候群(organic psycho-syndrome)が,慢性・急性と精神病性・非精神病性の2軸で器質性精神症状を分類しようとしたのと似ていて,わかりやすくはある.しかし実際には分類上の難点があり,例えばレノックス・ガストー症候群では,実際には明確な脳病変なしに出現する特発性のものと,幼少時における大きな脳損傷や結節性硬化症によって引き起こされる症候性のものとがあるため,症候性てんかんだけではなく,特発性てんかんである場合が含まれてしまうという問題があった.実際の運用としては,多くの臨床家が1989年分類の大分類を用いる際には,症候性(潜因性)全般てんかんという大分類名においては,症候性とか全般とかという本来の意味を棚上げし,「しょうこうせいぜんぱんてんかん」というラベルとしてこれを用いていたが,文字通りの症候性・全般・てんかんという大分類としてこれを受け取る臨床家も少なからずいて混乱があった.このため,症候性全般てんかんという大分類名は,その後,てんかん性脳症に置き換えられることとなった.つまり,そもそもてんかん大分類の最初のひな型となった1989年分類が,原因分類である症候性・特発性という軸と,理念的には脳波に基づいた症状分類である部分・全般という軸の2つをもとにして考案されたものでありながら,運用上は,近似した構造をもつてんかん症候群同士を集めて総括しておく用語としても用いられていたのである.

3.てんかん大分類の近年の改訂(図2
 ICD-11のてんかん分類のひな型となった2010年分類と1989年分類,2017年分類との異同,またどういう理由からそのような改訂がなされたのかについて概説しておきたい.
 Jackson, J. H. は,精神医学にも大きな影響を及ぼした19世紀におけるてんかん学のパイオニアであるが,その有名な箴言に,分類における植物学者と庭師の喩えがある.つまり,一定の原理から統一的に分類を行う植物学者の視点からなる分類と庭師の有用性の観点から行われる分類があって,両者は相補的であるが必ずしも一致するわけではないことをJacksonは植物学者と庭師のやり方と呼んだのであった.予後,年齢依存性,病態生理が全体として類似しているようにみえる症候群同士を集めて大分類を構成するという仕方は,基本的には庭師のやり方であって,臨床的な有用性は高いが線引きに一定の曖昧さが残り,境界線上にある症候群についてはその位置づけが人によって異なることになる.それに対して,症候性あるいは特発性という概念をより厳格に適応して分類を行う場合,分類の仕方そのものには曖昧さはなくなるが,有用性という点で見劣りのする植物学者的(リンネの時代のという但し書きをつける必要があると思われるが)分け方になる傾向が生ずる.2010年分類は,より植物学者的な分類であり,有用性において大きな問題があったために,2017年分類では1989年分類に近い形に分類は復元され,その代わり1989年分類がもっていたラベル的な誤解の生みやすさを除く形で改訂が行われている.
 ICD-11分類の冒頭に挙げられた2つの分類,構造上または代謝性の病態または疾患によるてんかん(Epilepsy due to Structural or Metabolic Conditions or Diseases)(8A60)と主としてんかんを症状とする,遺伝性または遺伝性と推定される症候群(Genetic or Presumed Genetic Syndromes Primarily Expressed as Epilepsy)(8A61)は,2010年の国際抗てんかん連盟のてんかん分類における用語をそのまま踏襲している.8A60の構造的疾患あるいは代謝疾患によるてんかんというのは,1989年分類の症候性というラベルを,庭師的な読み替えの余地がないように明確化するために採用された用語と考えることができる.MRI上の明確な病変,脳腫瘍,頭部外傷後の脳損傷,脳梗塞,出生時の外傷,脳炎,大脳異形成などを「構造的病変」という用語は念頭においている.8A61のてんかんを主な表現型とする遺伝的であることが想定されている症候群という言い回しはよく考えられた表現であるが,この用語は特発性という1989年分類の用語をより厳密に定義したものといえる.この場合,「genetic」の翻訳に際して,これがメンデル型の遺伝と安易に誤解されてしまうことを避けるため,邦訳では遺伝性ではなく素因性という訳語が検討されていたことは,ICD-11のてんかんの部分の邦訳においては留意しておくべき点であろう.
 1989年分類と2010年分類の大きな相違は以下の3点に要約できる.(i)2010年分類ではてんかん学特有のコンセプトである部分てんかん(現行の焦点てんかん)・全般てんかんの区別を基本的には廃止したこと,(ii)てんかん症候群を診断としては最も重要視したこと,(iii)(ii)においていわゆる部分てんかんの症候群は基本的に認めず,遺伝的(=素因的)な背景がある症候群のみを正規の症候群としては認知したことである.その結果,きわめて数も多く重要な疾患である側頭葉てんかんなどは,症候群としては正規の認知はされず,海馬硬化を伴う側頭葉てんかんのみが,準症候群としてかろうじて症候群に準じた扱いをしてもよいとされる結果となった.
 2010年分類は,庭師的観点からするときわめて使い勝手の悪い分類であった.第一に,2010年分類では,症候群診断ができないものを正規の診断とはしないという原則が示されていたが,症候群のほとんどがICD-11でいうところの8A61に属するものであることから,厳格にこの原則をあてはめると,7割以上の症例が正規の分類にはあてはまらなくなってしまうこととなった.第二に,さらに本質的な問題としては,図3に示したように,てんかんにおいては,その成因における遺伝因子と環境因子の関与は,例えば常染色体優性夜間前頭葉てんかんの100%近い遺伝因子の関与から,頭部外傷後のジャクソン発作の一般人口をわずかに上回る程度の遺伝負荷に至るまで大きな違いがあり,8A60と8A61の違いは見た目ほど単純に二分できるものではないことを挙げることができる.第三に8A60の下位分類は原因別になっているのに対して,8A61は本来のてんかん学的な臨床脳波症候群であって,分類の原則が両者でまったく異なったものとなっているのも,冒頭で挙げたボルヘスの事典風の混乱した印象を与える結果となっている.第四もかなり臨床的に深刻な問題であるが,1989年分類では中心的な括りであった特発性全般てんかんを配置する場所がなくなってしまっていることを挙げることができる.例えば脳波上は3c/sあるいはそれよりも早い全般性の棘徐波を示し,強直間代発作のみを発作型とする思春期から20歳代に発症したてんかんを例にとると,特発性全般てんかんとは診断できても特定の症候群にあてはめるのは困難である.こうした症候群にはあてはまらないが,大分類にはあてはまる事例は,大きな括りで「てんかん」としか分類できなくなってしまい,杓子定規に分類に従うと,1989年分類では得られていた予後,第一選択薬などに対する指針が得られなくなってしまう.
 こうしたさまざまの問題から,最近の2017年分類では,ローランドてんかんやパナイトポーラス症候群を代表とする特発性部分てんかんの括りこそ復活はしなかったが,他の1989年分類は名称は変わったものの復活することとなった.ただし,焦点てんかん(ICD-11では実質的には8A60に相当)の下位分類に,側頭葉てんかん,後頭葉てんかんといった括りは正規に復活したわけではない.

図1画像拡大
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II.ICD–11のてんかん分類の概説
表1にICD-11のcodeの原文を示した.以下,順番に直近のてんかん診断・分類との関係から概説を行う.なお,8A64,8A67は実臨床ではほとんど使われないので説明を省く.

1.てんかんの定義
 ICD-11におけるてんかんの定義は,24時間以上の間隔をあけて,非誘発性のてんかん発作が2回以上起こるというものである.この非誘発性のてんかん発作とは,例えば頭部外傷の急性期で脳に直接の浮腫などによる刺激が加わっていたり,低ナトリウム血症など症候性の原因があって起こるてんかん発作は除くという意味である.したがって,てんかん発作を経験する人の多くは実際にはII.3で挙げる急性症候性発作であるが,これはてんかんの定義には含まれないことに留意しておく必要がある.反射てんかんはてんかん発作に入れるという注釈も重要で,例えば光刺激やあるいは特殊なものでは特定の音楽(琵琶湖周航の歌やカントリーミュージックなど)で誘発されるてんかん発作は,急性症候性発作とは区別して,てんかんとしてカウントすることになっている.反射てんかんの場合には,脳の機能を通常は障害しない刺激によって慢性的に発作が誘発されるが,急性症候性発作の刺激は脳の粗大な機能障害を伴い,この機能障害の1つの現れとしててんかん発作が出現するため,機能障害が起こらなければてんかん発作は反復されることがない点が重要である.
 詳細は省くが,このてんかんの定義は,2014年に国際抗てんかん連盟によって改訂が行われており3),1回のてんかん発作でも,未治療ではてんかん発作が再燃する可能性が6割以上の確率である場合には,これをてんかんと呼ぶという新たな定義となっている.具体的には中枢神経系疾患の既往歴がある場合(脳炎など),脳波上明らかなてんかん性放電がみられる場合などが1回のてんかん発作だけでてんかんと診断できる場合に相当する.さらにてんかんを単にてんかん発作によって定義するのではなく,てんかんを引き起こす脳の機構およびその機構によってもたらされる心理社会的な影響全体を指す用語として再定義することによって,てんかんによってもたらされる状況を,副次的な効果としてでなく,てんかんそのものの主軸的な症状としてとらえなおす試みも行われている(図4).

2.狭義のてんかん(8A60~62,8A6Y)
 ICD-11の分類において狭い意味でのてんかんに相当するのは,8A60~62および8A6Yである.構図としては,8A60は,1989年分類の症候性部分てんかん,2017年分類では焦点てんかんに相当するが,2017年分類の焦点てんかんは,1989年分類の特発性部分てんかんを含むものとなっている.8A61は,1989年分類の特発性全般てんかん,2017年分類の全般てんかんにおおよそ対応するが,ローランドてんかんやパナイトポーラス症候群を含む1989年分類の特発性部分てんかんや,1989年分類ではてんかん性脳症に含まれていたミオクロニー脱力てんかん(いわゆるDoose症候群)やミオクロニー欠神てんかんが,ここに含まれている点が,1989年分類とは異なっており,他方で,2017年分類とは,1989年分類の特発性部分てんかんがここには含まれていない点が異なっている.また,ドラベ症候群などもICD-11では8A61に含まれている.図5において,具体的な症候群の例を挙げながら,この線引きを概観した.てんかん性脳症は,ここでは,てんかん発作自体によって知的障害がもたらされるものと考えてある.
 なお,8A6Yでは,位置づけのはっきりしないてんかん症候群やてんかんに起因する症状が雑然とゴミ箱診断的に集められている.

3.急性原因による発作(Seizures due to Acute Causes)(8A63)
 定義の項目でも挙げたように,てんかんの分類においては,何らかの急性の脳の機能障害によって引き起こされるてんかん発作(急性症候性発作)とそうではないてんかん発作(非誘発性発作)が区別される必要がある.これは,先ほどもふれたように疫学研究によって,急性症候性発作が,自然に再燃することがほとんどないことが知られているからである.急性症候性発作を含めると,てんかん発作の生涯有病率は10%近くにもなるが,てんかんはその10分の1程度でしかない.

4.孤発非誘発性発作(Single Unprovoked Seizure)(8A65)
 機会性てんかんという用語はすでに使用されていないが,1回のみの急性症候性発作ではないてんかん発作を指す.脳波上てんかん放電もなく,中枢神経系の疾患の既往歴もない場合の,機会性てんかんにおいては,2回目のてんかん発作が出現する可能性は3割程度とされていて,通常は抗てんかん薬による治療を開始しないため,これは新たな定義(2014年)においてもてんかんの範疇には入れない.中枢神経系疾患の既往歴があったり,脳波上てんかん性放電が確認された場合には,6割以上の再発率があるので,先ほどふれたように新たな定義では8A65からはずれることになる.

5.てんかん重積状態(Status Epilepticus)(8A66)
 てんかん発作重積状態の多くが,単発の急性症候性発作であるために,これをてんかんの一部に単純に含めることはできず,また,急性症候性発作のなかでは,基礎疾患の治療に加えて,てんかん発作そのものへの緊急対応を要することから,別途分類することには意味がある.

6.発作型(Types of Seizures)(8A68)
 ICD-11の分類がボルヘスの事典のような錯綜した印象を与える大きな理由の1つが,水準の違ったてんかん発作を,てんかん大分類と並列して並べていることである.

7.他の特定されるてんかん又はてんかん発作(Other Specified Epilepsy or Seizures)(8A6Y)
 2014年の新たな定義による1回のみのてんかん発作で,てんかんと診断されるものであれ,従来通りの定義を用いて2回目の非誘発性のてんかん発作をもっててんかんと診断した場合であれ,いずれも,8A65をはずれることになるが,典型的にはその場合,てんかん性脳波所見もなく,中枢神経疾患の既往歴もない.また,1回か2回程度の発作で受診行動に至るのは,強直間代発作を起こしていて,しかもその他の症候群やてんかん大発作への類別を可能とするような臨床特徴を示さない事例が圧倒的に多い.さらに1~2回の発作では周囲の人の観察は十分ではないことが多い.こうした事情から,1~2回の強直間代発作で来院する場合,ここに分類せざるをえないことが多いであろうと想定される.言うまでもなく,それ以外に分類上,難しい事例も存在している.2017年分類では,分類不能てんかんが,てんかん大分類のなかに加えられており,8A6Zと対応している.

表1画像拡大
図4画像拡大
図5画像拡大

おわりに
 ICD-11のてんかん分類は,水準の違う分類が錯綜した形で入り混じっていて,そのためにボルヘスの事典のような混乱した印象を与えるものであった.古いversionでは,8A61のなかに特発性全般てんかんが含まれているなど,その混乱はさらに著しかったが,versionがアップされるにつれて若干の改善はみられるものの,本来は,水準の違う「てんかん発作型」(III.6)を,てんかん大分類や急性症候性発作と同列において分類していることで,整合性のとれた分類としては成立していない印象を否めない.また,この分類の基本となる遺伝性か環境因性かという原因論的な分類方法は,そもそもそれだけではてんかん臨床実践にそぐわない面があり,ICD-11のてんかん分類が,あまり汎用されることのないままにすでに廃止された2010年分類に基づくものであるという点はよく意識しておく必要がある.

 なお,本論文に関連して開示すべき利益相反はない.

文献

1) Berg, A. T., Berkovic, S. F., Brodie, M. J., et al.: Revised terminology and concepts for organization of seizures and epilepsies: report of the ILAE Commission on Classification and Terminology, 2005-2009. Epilepsia, 51 (4); 676-685, 2010
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2) Commission on Classification and Terminology of the International League Against Epilepsy: Proposal for revised classification of epilepsies and epileptic syndromes. Epilepsia, 30 (4); 389-399, 1989
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3) Fisher, R. S., Acevedo, C., Arzimanoglou, A., et al.: ILAE official report: a practical clinical definition of epilepsy. Epilepsia, 55 (4); 475-482, 2014
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4) 兼本浩祐: てんかん学ハンドブック, 第4版. 医学書院, 東京, 2018

5) Scheffer, I. E., Berkovic, S., Capovilla, G., et al.: ILAE classification of the epilepsies: Position paper of the ILAE Commission for Classification and Terminology. Epilepsia, 58 (4); 512-521, 2017
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