Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第124巻第4号

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症例報告
精神科救急医療施設への入院後,治療抵抗性統合失調症の可能性を検討するなかで,先天性心疾患の既往が手がかりとなり,22q11.2欠失症候群と診断された1例―精神科救急単科病院,臨床現場からの報告―
松山 光一1), 金原 信久2), 花岡 晋平1)
1)千葉県精神科医療センター
2)千葉大学社会精神保健教育研究センター
精神神経学雑誌 124: 233-238, 2022
受理日:2021年12月21日

 22q11.2欠失症候群(以下,本疾患)は精神疾患の合併が多いことで知られている.今回われわれは,さまざまな精神症状を呈し,複数の精神科医療機関を受診していたにもかかわらず,本疾患であることが認識されず,神経発達症もしくは統合失調症と診断され治療が続けられていた症例を,精神科救急入院料算定施設(以下,精神科救急施設)の臨床において経験したので報告する.症例は20歳代半ば,女性.薬物療法を行うも,幻覚妄想および爆発性や衝動性を伴う滅裂な言動は改善せず,錐体外路症状を疑う有害事象も生じやすいため,治療は困難であった.治療抵抗性統合失調症の可能性を検討するなかで,先天性心疾患の既往があることがきっかけとなり,初めて本疾患が疑われ,遺伝子検査により診断が確定した.本疾患は小児期での診断が理想的だが,現実には未診断のまま成人し,新たな精神病症状の出現で初めて診断される例が報告されており,精神科医も未診断の成人例に出会う可能性が十分にある.しかし,本邦ではこのような経過での報告は,管見の限り大学病院および総合病院精神科からの7報にとどまり,精神科救急施設からの報告は初出である.精神科救急施設においても,先天奇形の既往があり,治療抵抗性統合失調症を疑う場合には,本疾患を鑑別することが望ましい.

索引用語:22q11.2欠失症候群, 統合失調症, 自閉スペクトラム症, 注意欠如・多動症, 知的能力障害>
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