Advertisement第116回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第121巻第12号

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総説
ハーム・リダクションの理念とわが国における可能性と課題
松本 俊彦
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部
精神神経学雑誌 121: 914-925, 2019

 国際条約に基づいて薬物規制が本格的に開始されたのは60年前であるが,近年になって,そうした厳罰政策の弊害が認識され始めた.そのなかで,供給低減と需要低減による薬物使用量低減対策を補完するものとして,注目されている公衆衛生政策と実践の理念が,ハーム・リダクション(二次被害低減,HR)である.本稿では,国際社会がHRを採用するに至った経緯,そしてHR政策の実践とその成果について概説した.そのなかで,HRは決して薬物汚染が深刻な国の「苦肉の策」ではなく,むしろ厳罰政策の限界から出発した,効果的な公衆衛生政策と支援実践の理念であることを指摘した.さらに,HRは薬物使用者の人権を尊重し,厳罰政策によって支援から疎外された人間を孤立から救い出すための倫理的実践であることを強調した.最後に,わが国の薬物対策の課題として,危険ドラッグ対策が供給低減に極端に偏ったため,需要低減をおろそかにし,かえってより有害な危険ドラッグの流通を許すとともに,薬物使用によるharmを大きくした可能性を指摘した.さらに,わが国で最も問題となっている覚せい剤使用に対するHRとしては,安心して相談できる治療環境を整えることと,薬物使用者のセルフスティグマを強めない薬物乱用予防の啓発が必要であることを主張した.

索引用語:需要低減, ハーム・リダクション, 覚せい剤, 危険ドラッグ, 供給低減>
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