進化精神医学には多様な視点があるが,適応論的アプローチは,発熱や疼痛などと同様に「不安」や「うつ」にも生存や繁殖上のリスクを回避する適応面を有すると考える.また,現代社会環境と「進化適応環境」とのギャップに精神疾患の要因を探る考え方もある.この考え方に関連する重要な概念として「自己家畜化」がある.自己家畜化への「従順性」や「高知能」への人為淘汰圧がヒトの精神疾患への脆弱性を高めている可能性がある.著者は,精神疾患の要因を「自己家畜化」およびそれと「共進化」する形で監視や管理を強める「人間動物園」的環境にも探れると考える.本稿ではこの視点から精神疾患と関連する現代社会への考察も加える.
進化精神医学の諸相―「進化適応環境」と「自己家畜化」の視点から―
医療法人社団明雄会本庄児玉病院
精神神経学雑誌
127:
89-96, 2025
https://doi.org/10.57369/pnj.25-016
受付日:2024年2月21日
受理日:2024年9月2日
https://doi.org/10.57369/pnj.25-016
受付日:2024年2月21日
受理日:2024年9月2日
<索引用語:進化精神医学, 進化適応環境, 自己家畜化, 人為淘汰, 人間動物園>