Advertisement第121回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第127巻第1号

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特集 課題解決型高度医療人材養成(精神領域)のこれから―産業保健との関連から―
医学・医療領域の共同創造に向けた組織変革―東京大学医学のダイバーシティ教育研究センターの設立と取り組み―
里村 嘉弘1)2), 金原 明子1)2), 笠井 清登1)2)
1)東京大学大学院医学系研究科・医学のダイバーシティ教育研究センター
2)東京大学医学部附属病院精神神経科
精神神経学雑誌 127: 24-31, 2025
https://doi.org/10.57369/pnj.25-005
受付日:2024年2月14日
受理日:2024年8月20日

 東京大学では,2019年より課題解決型高度医療人材養成プログラム「職域・地域架橋型-価値に基づく支援者育成」事業(TICPOC)を立ち上げた.TICPOCでは,values-informed careをめざし,必要な素養としてトラウマインフォームドケア(TIC),共同創造(CP),組織変革(OC)を習得するための各コースを設置して,心理職・福祉職・医師・教育関係者などの対人支援専門職やピアサポートワーカーを多数輩出してきた.共同創造は近年,さまざまな領域において指針となる理念として重要視されている.医療・医学領域も例外ではなく,特に研究分野において患者市民参画(PPI)が導入されつつあるが,障害のある人材が専門職やサービスの提供側として活躍する機会は限られている.障害のある人材が医療者として活躍することは,公正な社会の実現のために不可欠である.また,自らの経験に基づいた独自の実践的洞察による包括的・効果的なケアを提供できること,周囲の同僚や組織文化に波及的な影響をもたらすことなどにより,医療・医学の水準をより高めるという点でも意義が大きい.東京大学医学部では,共同創造を含めたTICPOCの活動を展開し,医療人材の多様性と包摂(D&I)を推進するため,2021年「医学のダイバーシティ教育研究センター」を設立した.本センターでは,医学部の学生を対象とした教育プログラム,障害を有しながら医療に従事する医師・看護師・医学研究者などと学び合う教育プログラムを新たに立ち上げ,TICPOCとも連動しながらピアサポートワーカーとの協働やピア人材育成を継続して行っている.また,東京大学先端科学技術研究センター・インクルーシブ・アカデミア・プロジェクトとの連携により,障害のある科学者や医療者が自身の経験を語るインタビュー動画を掲載するサイト(Disabled in STEMM)を立ち上げた.今後は,他大学・医療機関の支援部署間におけるネットワークの構築や,より効果的な教育・介入法の開発にも取り組んでいきたい.

索引用語:医学教育, 多様性と包摂, 障害, 共同創造, 組織変革>
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