Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第126巻第9号

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資料
治療抵抗性うつ病に対するrTMS保険診療の実施状況調査からみえてきた適切な普及にとっての問題点と今後取り組むべき課題
髙橋 隼1)2)3)4), 松田 勇紀5)6), 鬼頭 伸輔5)7), 中村 元昭8), 伊津野 拓司9), 野田 賀大10)11)
1)大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室
2)公益財団法人浅香山病院臨床研究研修センター
3)大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科
4)和歌山県立医科大学医学部神経精神医学教室
5)東京慈恵会医科大学精神医学講座
6)京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康増進・行動学
7)国立精神・神経医療研究センター病院精神診療部
8)昭和大学発達障害医療研究所
9)神奈川県立精神医療センター
10)慶應義塾大学医学部精神神経科学教室
11)国際医療福祉大学三田病院精神科
精神神経学雑誌 126: 589-598, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-095
受理日:2024年4月2日

 治療抵抗性うつ病に対するrTMS療法が保険収載され,2023年12月時点で約4年半が経過したが,患者がrTMS保険診療に容易にアクセスできる環境はまだ整えられていない.そこで本研究はrTMS保険診療の導入施設を対象に実施状況および要望をアンケート調査し,rTMS保険診療の適切な普及と発展に向けて取り組むべき課題について検証した.rTMS保険診療を提供している39医療施設の代表者あるいはrTMS担当者を対象にWebフォームによる質問票を2022年12月14日に配布し,翌1月15日を回答締め切りとして28施設から回答を得た(回収率71.8%).rTMS療法は主に入院で提供され,1日あたりの平均実施数は1例が50%で最も多く,2例が21%と続いた.他医療機関からrTMS療法の依頼があった場合に4週間以内に治療を実施できている施設は54%であった.39%の施設において運動閾値が高すぎてrTMS治療を導入できない症例を経験し,39%の施設が刺激痛のため治療を継続できない症例を経験していた.けいれん発作,失神,躁転といった重篤な有害事象を経験した施設はなかった.rTMS療法を実施する際の課題として,人的リソースの確保困難,治療時間の長さ,保険点数の低さが上位に挙げられた.89%の施設がrTMS療法による維持治療の保険適用を希望し,治療時間の短いシータバースト刺激やダッシュプロトコルの臨床応用を希望している施設はそれぞれ71%,61%であった.さらに71%の施設がクリニックでのrTMS保険診療の提供に賛成していた.rTMS保険診療の普及のためには,実施者基準と実施施設基準の緩和によってマンパワーが拡充して治療提供の場が広がることと,提供医療機関に経済的損失のでない妥当な診療報酬の設定が望まれる.さらに新たな刺激法や新規適用疾患への有効性が先進医療や臨床研究から検証され,rTMS治療が発展することが期待される.

索引用語:治療抵抗性うつ病, 反復経頭蓋磁気刺激, 保険診療, 実施状況, アンケート>
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