Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第121巻第12号

※会員以外の方で全文の閲覧をご希望される場合は、「電子書籍」にてご購入いただけます。
総説
ハーム・リダクションの理念とわが国における可能性と課題
松本 俊彦
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部
精神神経学雑誌 121: 914-925, 2019

 国際条約に基づいて薬物規制が本格的に開始されたのは60年前であるが,近年になって,そうした厳罰政策の弊害が認識され始めた.そのなかで,供給低減と需要低減による薬物使用量低減対策を補完するものとして,注目されている公衆衛生政策と実践の理念が,ハーム・リダクション(二次被害低減,HR)である.本稿では,国際社会がHRを採用するに至った経緯,そしてHR政策の実践とその成果について概説した.そのなかで,HRは決して薬物汚染が深刻な国の「苦肉の策」ではなく,むしろ厳罰政策の限界から出発した,効果的な公衆衛生政策と支援実践の理念であることを指摘した.さらに,HRは薬物使用者の人権を尊重し,厳罰政策によって支援から疎外された人間を孤立から救い出すための倫理的実践であることを強調した.最後に,わが国の薬物対策の課題として,危険ドラッグ対策が供給低減に極端に偏ったため,需要低減をおろそかにし,かえってより有害な危険ドラッグの流通を許すとともに,薬物使用によるharmを大きくした可能性を指摘した.さらに,わが国で最も問題となっている覚せい剤使用に対するHRとしては,安心して相談できる治療環境を整えることと,薬物使用者のセルフスティグマを強めない薬物乱用予防の啓発が必要であることを主張した.

索引用語:需要低減, ハーム・リダクション, 覚せい剤, 危険ドラッグ, 供給低減>

はじめに
 人間は薬物を用いる動物である.なるほど,野生の動物のなかにも,薬草に身体をこすりつけ創傷の治癒を促したり,薬効のある植物を食むことで寄生虫を駆除したりする動物がおり,さらには,腐った果実や穀物が発酵してできた天然のアルコール飲料を楽しむ動物も存在する4)
 しかし,自然界に存在するさまざまな薬草から有効成分を抽出,精製し,さらには人工的に合成して薬物を作り出す動物,そして,その薬物を病気の治療に用い,共同体の結束を固め,親睦を深め,あるいは,日々の憂さを晴らすのに用いる動物―そのような動物はどうだろうか.そのような動物は,この地球上には人間をおいて他にいないはずである.薬物を作り出し,それを用いる能力は,人類の寿命を延ばし,複雑化した共同体を維持し,地球上での繁栄に貢献してきた.その意味で,薬物の歴史は文明の歴史と同じくらい古い.
 その長さに比べると,人類が法と刑罰によって薬物を規制するようになった期間はあまりにも短く,ほんの60年前からのことでしかない.そして近年,国際社会において法と刑罰による薬物規制の弊害が認識されるに伴い,注目を集めているのが,ハーム・リダクション(二次被害低減,harm reduction:HR)と呼ばれる公衆衛生政策と支援実践の理念である.
 しかし,わが国ではHRはしばしば誤解されている.例えば「寛容政策」などと言い換えられ,「海外の薬物汚染が深刻な国が,もはや取り締まることができなくなってしまって,やむなく採用している政策」などと誤った説明が流布し,あるいは,治療目標を「断酒」ではなく「減酒」に置き換えたアルコール依存症治療を指して,HRと呼ぶようないささか乱暴な単純化がなされている.
 本稿では,国際社会がHRを採用するに至った経緯,そしてHR政策の実践とその成果について概説し,最後に,HRをめぐるわが国の現状と課題について私見を述べたいと思う.

I.法と刑罰による規制の歴史とその効果
1.法規制の背景にあるもの
 国際的な薬物規制の取り組みは,第二次世界大戦終了以降,国連主導で行われた.今日における規制の基礎となる条約は1961~1988年に成立したものである.まず1961年に,アヘンやモルヒネといったopioid類,cocaine,大麻を対象とした「麻薬に関する単一条約」が採択された.次いで1971年には,amphetamine類などの中枢神経興奮薬や,barbituratesやbenzodiazepineなどの鎮静催眠薬,LSD(lysergic acid diethylamide)やMDMA(3,4-methylenedioxymethamphetamine)といった幻覚剤を対象とした「向精神薬に関する条約」が,そして1988年には,「麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約」がそれぞれ採択された.いずれの条約にも,日本を含めた180ヵ国以上が批准しており,わが国の薬物規制法はすべてこうした条約を根拠としている.
 しかし,こうした薬物規制が必ずしも医学的根拠だけに依拠しているとはかぎらない.社会学者の佐藤は,薬物規制にはある種の感情論―少数民族や少数集団に対する社会不安や排斥感情―の影響が無視できないと指摘している26).例えば欧州諸国によるアヘン規制の発端には,清帝国崩壊後,欧州諸国の植民地や本国に移住してきた中国人に対する嫌悪感が,そして,米国連邦政府による大麻規制には,禁酒法廃止後の1930年代におけるメキシコ移民に対する嫌悪感が,それぞれ影響しているという.そのことはわが国における1951年の覚せい剤取締法制定でも例外ではなく,佐藤によれば,第二次世界大戦後,都内の戦争孤児による非行(ヒロポン常習者が多かった)に対する社会不安,さらには,「朝鮮人がヒロポンを売って得た収入を,朝鮮半島に送金している」という流言が世論を後押ししたという25)
 その意味では,本来は,社会から「薬物」を排除するための薬物乱用防止教育が,ともすれば薬物を使用する「人」を排除するスローガンとなりやすいのは,もしかすると,根底にこのような排除の感情があるからなのかもしれない.
 なお,薬物規制強化施策の背景には,政治的な意図が影響することもある.米国における厳罰主義政策は,1971年に当時の大統領Richard Nixonによって始められたが,当時,二期目大統領在任中であったNixonはベトナム戦争の長期化により支持率が低下し,反戦デモへの対応に苦慮していた26).その意味で,薬物の規制強化は反戦デモ(参加する若者の多くが大麻などの薬物の使用者であった)の勢いを削ぐ効果があったといわれている.

2.厳罰政策がもたらした弊害
 こうした規制強化の効果については,近年,厳しい結果が指摘されている.最もわかりやすい数値を挙げれば,世界におけるアヘン生産量の変化がある.世界中のアヘン生産量は1980年の約1,000トンから,2000年には9,000トン弱に増加している32).言うまでもなく,この20年間に世界の人口は9倍になってはいない.
 麻薬に関する単一条約の公布から50年が経過した2011年,各国の元首脳や学識経験者を中心に組織された薬物政策国際委員会(Global Commission on Drug Policy)は,最近50年間の法と刑罰による厳罰政策の効果に関する評価を行った6).そのうえで,厳罰政策が完全に失敗であると宣言し,各国に薬物政策の見直しを提言したのである.レビューから明らかにされたのは,50年間,規制された薬物の消費量や,薬物関連犯罪のために刑務所に収容される者の数は世界中で増大し続け,同様に,薬物使用者における新規HIV感染者や,薬物過量摂取による死亡者も年々増加の一途をたどっていったことであった.そして薬物使用者は「犯罪者」という烙印を押され,使用障害の治療や地域における保健福祉的支援から疎外されていることも明らかになった.何よりも規制強化は,密売組織に巨利をもたらし,もはや国家権力によっても薬物のブラックマーケットを統制できない状況を生み出してしまっていたのである.
 これは皮肉な結果であった.麻薬に関する単一条約の前文にもあるように,この国際的協調に基づく法と刑罰による薬物規制は,あくまでも「人類の健康及び福祉に思いをいたし」てなされたものであったにもかかわらず,実際には,人類の健康と福祉がかえって損なわれる事態を招いてしまったからである.
 実は,人類が法と刑罰による薬物規制の弊害と直面したのは,これが初めてのことではなかった.すでに米国においては,1920~1933年に禁酒法という壮大な社会実験が試みられていたのである.その結果,禁酒法が施行されている十数年のあいだ,米国民のアルコール問題は解決せず,むしろ密造酒の横行を促し,アルコールの密売で巨利を得た反社会勢力が肥大化し,社会の治安が悪化した.また,methyl alcoholなどの工業用アルコール含有の粗悪な密造酒による健康被害も問題となった11)24)
 要するに,今日における厳罰主義による薬物政策の失敗は,単に人類が禁酒法の失敗と同じ轍を踏んだだけのことなのである.

II.HRの理念と実際
1.薬物対策におけるHRの位置づけ
 このような厳罰政策に疑問を抱き,欧州を中心に政策転換を試みる国があった.そして,厳罰政策に代わる政策・実践の理念として登場したのが,HRである.
 HRについて説明をする前に,まず薬物対策に関する総論的な説明をしておく必要がある.国家的規模で薬物問題に取り組む際,まず優先されるのは,国民の薬物使用量低減のための対策である.そして国民の薬物使用量低減にあたっては,2つの戦略が,いわば車の両輪となって機能しなければならない.
 その1つは,供給低減(supply reduction)である.これは,社会内に薬物が流通しないように,薬物を規制し,販売者や販売組織を取り締まることを意味する.そしてもう1つは,需要低減(demand reduction)である.薬物を欲しがる人を減らすこと,すなわち,薬物乱用防止と再乱用防止を意味する.なかでも重要なのが薬物使用障害の治療と回復支援である.というのも,さまざまなリスクを冒してでも薬物を入手しようとし,ブラックマーケットにおける薬物の価格を高騰させているのは,使用障害罹患者だからである.
 しかし,規制強化による供給低減には限界があり,使用障害の治療・回復支援のための体制を整備しても,治療にアクセスしない者,あるいは治療から脱落する者,さらには,治療を最後まで受けたにもかかわらず断薬困難な者は必ず存在する.そのような者に対しては,薬物使用の結果生じる健康被害や社会的弊害を低減することで,薬物使用によるharmを最小化する必要がある.そして,そのための対策がHRなのである.つまり,HRは,決して供給低減と需要低減による薬物使用量低減施策を否定するものではなく,むしろそれを補完する施策といえるであろう.

2.HRの定義と対象
 上述したような位置づけを踏まえたうえで,HRの定義を述べるとすれば,次のようになる.「すべての薬物使用者に適用される,薬物使用によるharm低減のためのヘルスケア,社会福祉サービスの政策,および支援実践の理念」1).そして,その具体的な方法として,注射室設置,無償注射器交換サービス,methadoneやbuprenorphineによる代替療法,断薬を条件としない住宅サービスや就労プログラム,過量摂取予防教育と過量摂取時の拮抗薬投与,安全な物使用法に関する情報提供がある.
 もちろん,harm低減施策は,上述のものだけにはかぎらない.重要なのは,薬物使用をやめられない人,あるいは,やめるつもりのない人が一定の割合で存在することを前提とし,薬物の使用量ではなく,個人および社会レベルにおける薬物使用による「ダメージ」の量に注目し,その低減を求めることである.
 実際,臨床現場では,一定の割合で薬物使用をやめられない人が存在する.幼少期の虐待や性暴力被害によって基本的信頼感を毀損されてきた薬物使用者のなかには,重篤な使用障害に罹患している者が少なくない.彼らは,心的外傷に関連する精神疾患の症状が引き起こすさまざまな心理的・感情的苦痛への対処として,いわば「自己治療(self-medication)」13)的に薬物使用を続けている.深刻な事例では,衝動的に沸き起こる自殺念慮を一時的に意識から遠ざけるために―文字通り「生き延びる」ために―薬物使用を続けている.
 このような臨床類型に該当する薬物使用者にとっては,いつ裏切るかわからない「人間」に援助希求するのは危険な行為であって,それよりは,「物質」のほうがはるかに安心と感じられるのである.したがって,薬物使用者にとっての薬物とは,たとえるならば「chemical friend」22)のような存在であって,性急な断薬要求は,セルフコントロールの手段を剝奪される恐怖を味わわされる体験なのである.
 従来の厳罰政策においては,こうした薬物使用者は何度となく薬物犯罪によって逮捕され,刑務所服役を繰り返すなかで,社会での孤立を深めていた.また,医療機関においてさえ,断薬困難な患者として断薬ベースの治療プログラムから排除されてしまうことがあった.HRでは,こうした薬物使用者ともharm低減を目的とした支援関係を維持することができる.
 その一方で,使用障害がないために薬物使用をやめるつもりがない人たちもいる.国連薬物・犯罪事務所(United Nations Office on Drugs and Crime:UNODC)編「World Drug Report 2016」31)によれば,過去1年間以内の薬物使用経験者のうち,使用障害に該当する者はわずかに11.7%にすぎず,残りの者は薬物使用による医学的および社会的なharmを呈することなく,薬物と共存しながら生活している可能性が高い.なかには,社会的意義の大きい職業的活動を通じて,コミュニティに多大な貢献をしている者もいるであろう.
 このような薬物使用者の場合,断薬を目標とする薬物使用障害治療プログラムにマッチせず,無理に参加を勧めても本人は何らのメリットを自覚できないであろう.といって,そのまま薬物使用を継続していれば,将来的には使用障害に罹患し,さまざまなharmを生じるリスクが高いのも事実である.
 ところが,HRの場合,そのような使用障害未満の薬物使用者に無理に断薬ベースの治療プログラムを勧めたり,薬物使用の低減を求めたりすることはせず,現時点の彼らにとってメリットが自覚できる支援を提供するのである.例えば,彼らをHIV感染リスクから守るために無償注射器交換サービスを提供したり,健康問題,あるいは仕事や子育てといった生活上のさまざまな困りごとに関して相談支援を行ったりする.それによって,薬物使用によるharmを未然に防ぎつつ,支援者と薬物使用者の関係性も維持することが可能となり,使用障害発症時には速やかに介入し,必要に応じて断薬ベースの治療プログラムにつなげることもできる.
 以上からわかるように,HRは,断薬ベースの治療プログラムを基本に据えつつも,そこから抜け落ちてしまう薬物使用者に対しても支援を届けようとする,という点で野心的な支援実践なのである.

3.HRが重視しているもの
 HRは,薬物使用者の援助希求能力の乏しさに注目し,それに対する配慮を重視している1).援助希求行動を阻むのは,彼らが抱えているセルフスティグマ(当事者が自身に対して抱く偏見,自分は人々から差別され嫌悪されているという思い込み)である.それは,厳罰政策によって,「犯罪者」という否定的な自己イメージを内在化されることで生じている.さらに,幼少期の虐待やいじめ被害を生き延びた薬物使用者の場合には,基本的信頼感の毀損によって,それはいっそう強烈なものとなっている.
 HRはまた,薬物乱用防止の名のもとで,薬物使用者を凶悪犯罪者のように扱ったり,「モンスター」や「ゾンビ」のような恥辱的表現で描いたりするなど,意図的にスティグマを強化する啓発や予防教育を問題視している.こうした社会的スティグマが,地域社会からの排除を促進するとともに,当事者のセルフスティグマを強化するからである.
 さらにHRは,援助者に否定的な態度を戒め,薬物使用者の基本的人権と人間としての尊厳を尊重する態度を求めている1).その意味では,Marlatt, G. A.16)の,「HRとは態度(attitude)のあり方であり,共感的プラグマティズムである」という言葉は,実に正鵠を射ている.同時に,HRが,harmを生じる危険の高い行動を管理するだけのものではないことも理解できるはずである.薬物使用者の人権―薬物使用をやめない権利も含めて―を尊重し,その個別性と文化的,宗教的背景を考慮したものでなければならず,ピアサポート(同じ薬物使用者による当事者支援活動)とアドボカシー(薬物使用者のための権利擁護活動)もまた必須の構成要素となっている.

4.個別的臨床実践におけるHR
 HRの理念を個別支援の場で応用したものが,harm reduction psychotherapy(HRP)30)である.HRPは,患者の尊厳を重んじ,その個人的嗜好を否定せずに強みを信じ,患者の動機づけの程度に合わせたかかわりを重視する個別支援の理念であり,その特徴は,最大のharmは治療関係の中断であると捉える点にある.
 HRPにおいては,いきなり断薬を強いることはなく,まずは自身の薬物使用習慣をそのまま実行させ,セルフモニタリングを奨励する.当座の目標は,薬物渇望のトリガーを自覚できるようになることである.そして,薬物使用を善悪で裁かずに,つねに適応的な面と不適応的な面があると見なし,その両価性に共感しつつ,正しい方向へのスモール・ステップを評価する,という姿勢で臨む.
 したがって,「薬物をやめたくないが,薬物による悪影響は避けたい」という当事者の要求―かつてならば,こうした要求は援助者から「否認」と一蹴されるのがつねであった―は,自身を大切にする気持ちの芽生えとして,むしろ一種の底つきと肯定的に捉えるのである.

III.海外におけるHR政策の内容とその成果
 現在,静脈注射を用いる薬物使用が問題化している158ヵ国のうち,91ヵ国がHRに基づく対策(注射器交換プログラム90ヵ国,opioid代替療法80ヵ国)を採用している28)
 以下,そのうちのいくつかの国の取り組みを紹介したい.

1.スイス
 スイスでは,1970年代にheroinの乱用が国内に拡大した.このような事態への対策としてスイス政府は,1975年に麻薬法を改正し,厳罰化と規制強化を推進したにもかかわらず,1980年代後半には1~2万人だったheroin使用者が,1990年代には3万人にまで増加してしまったのである.そこで,1994年よりスイス政府は,注射器無償交換サービスやopioid代替療法を中心としたHR政策を開始した2)
 注射器無償交換サービスを導入した結果,薬物使用者におけるHIV新規感染者は順調に減少し,1994年の947人から,1997年360人,2014年と2015年はともに3人となり,AIDSによる死亡者数も,1992年の400人から2000年以降は50人前後で推移という状況になった.また,opioid代替療法の導入により,heroinの過量摂取による死亡者が減少し,1992年の419人から2000年以降は200人を下回った3)
 これらの施策により,最終的に国内のheroin使用者数は,1996年の18,000人から2005年の6,000人と,3分の1に減少した1)

2.オーストラリア
 2000年以前,オーストラリアの薬物政策は厳罰政策であった.しかし,1964年には6人であったheroin過量摂取による死亡者数が,1999年には1,116人にまで増加してしまい,オーストラリア政府は,対策をHRへと大きく舵を切ることとなった33)
 現在,オーストラリアでは,opioid代替療法の実施と,注射室設置,さらには,公共施設でのHRボックス(注射器や消毒綿,コンドーム,薬物依存症からの回復のための社会資源の情報が箱詰めされたもの)の無償配布が実施されている.このサービス導入後,HIV新規感染者や過量摂取死亡者が減少した.何より重要なのは,国家予算の大幅な削減に成功したことである7).推計では,HR政策に1豪ドル投入すると,医療費4豪ドル,公的資金7豪ドルの節約が実現できるという34)

3.カナダ
 カナダは,本来は厳罰政策の国であったが,HIV感染症や過量摂取死亡が深刻な社会問題となるなかで,1980年代末頃よりある民間団体による非公式な活動として,注射器無償交換サービスや注射室の設置が始められた8).やがてこの活動に研究者チームが参画し,バンクーバー市限定の「研究特区での試み」として開始された.
 バンクーバーにおける注射室設置活動は,多くの知見を明らかにした.代表的な知見を以下に列挙すると,HIV感染リスクの高い行動の減少,HIV新規感染者の減少,過量服薬による死亡者の減少,感染症治療に導入される薬物使用者の増加,さらに断薬を目標とする依存症治療プログラム参加者の増加などがある.いずれも個人の健康に関するharm低減に成功したのである35)
 社会に対するharm低減にも貢献している.注射室設置により,路上で薬物を注射する者や,路上に使用済み注射器を廃棄する者が減少し,街の景観が改善されたのである.また,当初,注射室設置により周辺地域での犯罪が助長される懸念があったが,これについてもそのような影響はなかったことが確認されている32)

4.ポルトガル
 2001年,ポルトガル政府は,あらゆる違法薬物の少量所持や使用を非犯罪化(違法ではあるが,刑罰を与えない)し,治療プログラムや福祉的支援の利用を促すとともに,社会内での孤立を防ぐ施策を積極的に推し進めた.具体的には,薬物使用者に対する就労斡旋サービスの拡充,薬物使用者を雇用する経営者への資金援助や,起業を希望する薬物使用者への融資などである.つまり,これまで薬物使用者を排除するために割いていた予算を,逆に社会内に居場所を作るために割り当てたわけである.
 この政策は劇的な成功をおさめた.政策実施から10年後の2011年,opioid代替療法参加者は以前の2倍以上に増え,HIV新規感染者は17%減少し,過量摂取死亡者は半減以下となった3).また,若者の違法薬物生涯使用経験率が14.1%から10.6%に減少し,若者のheroin生涯経験率も2.5%から1.8%に減少した3)

5.マレーシア
 マレーシアはイスラム教の国であり,セックスワークも同性間性行為も禁止されている.当然,薬物問題に関しても歴史的に厳罰政策を採用してきた歴史があり,少量の所持でもただちに刑務所服役となり,さらに出所後2年間は毎日警察に出頭しなければならず,再逮捕された場合には懲役5~13年,また,heroin 15 g以上を所持していた者は死刑という重い刑罰を与えられてきた.しかし,それにもかかわらず,HIV新規感染者数は急激に増加し,1990年には1,000人に迫り,2000年には5,000人,2002年には7,000人にのぼってしまったのである27)
 そこで2006年,マレーシア政府は政策転換を図り,注射器無償交換サービスとopioid代替療法を導入した.その結果,2009年のHIV新規感染者数は2,002人に減少した.推計によれば,2006~2013年の8年間で,12,653名のHIV新規感染予防に成功し,今後50年間従来の対策を続けていた場合に比べ,2,000万ドルもの国家予算の削減に成功したという23)

6.台 湾
 台湾では,もともと加熱吸煙によるheroin使用者が多かったが,2003年のSARS流行によって国外からのheroin流入が減少した結果,使用者は限られた少量のheroinを効率的に摂取すべく静脈注射使用をするようになった.その結果,2000年にはheroin注射使用者の4%にしか認められなかった注射器共有経験が,2004年には15%まで上昇し,HIV感染が拡大するにいたったのである15)
 こうした状況のなかで,2005年,台湾政府はHR政策の導入を決定した.2005年には,まずは注射器無償交換サービスを国内の2市2県で試行し,2007年からは国内全域で本格実施となった.その結果,2007年には713人であったHIV新規感染者が,2010年には177人に,そして2012年以降は2桁台へと減少したのである15)
 また,2006年2月からmethadoneを用いた代替療法も開始した.当初は,国内15ヵ所の専門医療機関から開始し,2015年には162ヵ所まで実施施設を拡大していった.専門医療機関の利用者は,2007年5,585人,2008年12,598人と増加していったが,2015年には逆に減少して8,789人となっている.この利用者減少は,台湾国内におけるheroin使用者の減少によるものである15)

7.国際機関のHRに対する認識の変化
 以上のような報告が相次ぐなかで,国際機関は従来の薬物政策を見直さざるを得なくなった.その結果,2013年,ついに国連は,「法の支配は薬物問題を解決する手段の一部でしかなく,刑罰は決して万能の解決策ではない」「健康被害や刑務所服役者を減らすという目標に沿って,人権や公衆衛生,また科学に基づく予防と治療の手段が必要」という,従来の対策を覆す声明を出すにいたった.
 さらに,2016年4月,18年ぶりに開催された国連麻薬特別総会では,1998年の前回総会での「薬物のない世界の実現」という非現実的な目標が撤回された.それどころか,「世界各地で起こるさまざまな犯罪や暴力は,薬物の使用によるものではなく,むしろ規制の結果」であり,「本来,健康と福祉の向上のためになされるべき薬物規制が,薬物使用者を孤立させ,社会的スティグマを強化している」という声明が出されたのである.今日,国際的には薬物問題はもはや司法的な問題ではなく,保健・医療・福祉的支援を必要とする健康問題と見なされるようになっている.
 もちろん,HRに課題がないわけではない.スイスでは,国内のheroin使用者が激減した代わりに大麻使用者が増加しており2),マレーシアと台湾においても,heroin使用者が減少した一方で,ketamine使用者が増えたことが報告されている15)23).その意味で,HRの課題は,依存性や健康被害という点で比較的「ソフト」な薬物使用の増加をどう考えるのか,という点にあるだろう.

IV.わが国におけるHRの可能性
1.わが国の薬物政策の課題―規制の功罪―
 日本は先進国のなかでは,国民の違法薬物生涯経験率が極めて低く,国際的には薬物乱用防止が奇跡的に成功した国として知られている.そして,しばしばその成功は,1993年以降,厚生省(現・厚生労働省)が推進してきた,「ダメ.ゼッタイ.」というキャッチコピーによる薬物乱用防止啓発の効果であると考えられている.
 しかし,本当にそうであろうか.もともとわが国は諸外国に比べて薬物問題の少ない国であったが,「ダメ.ゼッタイ.」開始後の1990年代後半には第三次覚せい剤乱用期が始まり,さらに2000年以降は,マジックマッシュルーム17)や5-MeO-DIPT18)などの「脱法的」薬物に翻弄され続けてきた.そして,その集大成的悲劇が,2012~2014年に巷間を騒がせた危険ドラッグ問題であった.
 実は,この3年間における危険ドラッグ対策には,わが国の薬物対策の問題点が見事に凝縮されている.わが国では,2013年と2014年の2回にわたって危険ドラッグに対する,包括指定という大がかりな規制強化が行われた.これは,従来の流通発覚後に行う「後追い的」な規制ではなく,すでに流通している危険ドラッグから判明した化学構造式の主要骨格に関して,側鎖変更によって合成可能と類推される数百種類もの成分を,いわば「先取り的」に規制する方法である.
 こうした規制強化が行われた時期,使用障害に罹患する危険ドラッグ使用者が増加し19),危険ドラッグが入手困難となった2016年以降は,危険ドラッグの代わりとなる薬物を求めて,覚せい剤や大麻などの違法薬物を使用するようになった者が少なくなかった29)
 それだけではない.規制が強化された3年間,精神科医療機関では,危険ドラッグ使用者における重篤な神経症状の増加5),救命救急医療機関では,搬送された危険ドラッグ使用者の身体合併症重篤化12),さらには,危険ドラッグ関連死の増加20)が確認されているのである.
 こうした一連の事実は,わが国の危険ドラッグ対策が供給低減に偏りすぎ,需要低減への対策がおろそかとなっていたこと,さらには,無謀な規制強化が危険ドラッグを極めて危険な「モンスター・ドラッグ」に育て上げ,使用によるharmを増加させたことを示している.
 皮肉なことに,あの時期,わが国で危険ドラッグ乱用がかくも深刻な状況を呈したのは,日本人の「思考停止した遵法精神」―違法薬物には手を出さないが,「捕まらない薬物」には諸手を挙げて飛びつく心性―が大きな役割を果たしていたと言わざるを得ない.実際,近年わが国では,精神科医療にアクセスする薬物関連障害患者においては,benzodiazepine受容体作動薬を中心とした処方薬や,感冒薬や鎮咳薬といった市販薬などの,いわば「捕まらない薬物」を乱用薬物とする者の割合が確実に大きくなっている21).このことは,法と刑罰による規制の限界を如実に示すものであろう.

2.わが国におけるHRの可能性
 わが国の薬物対策において歴史的に最も重要な薬物は,いうまでもなく覚せい剤である.それでは,もしもわが国で覚せい剤使用者に対してHRを実施するとすれば,一体いかなる方策が考えられるであろうか.
 はっきりしているのは,覚せい剤使用者の場合,heroinにおけるような代替療法は困難ということである.覚せい剤のような中枢神経興奮薬は身体依存がほとんどなく,厳しい離脱は引き起こさない.したがって,methadoneのような置換薬は不要である.また,buprenorphineのような渇望緩和に効果的な治療薬もなく,過量摂取時の呼吸抑制もないことから拮抗薬投与も意味をなさない.
 注射器交換サービスはC型肝炎やHIV感染症の予防という点で一定の効果が見込める可能性はあるが,1990年代半ば以降,加熱吸煙による使用者が増加しており,また,わが国の薬物使用者におけるHIV感染の大半は,男性同性間性交の際に粘膜を介して発生していることを考えれば9),その効果は限定的である.そもそも,C型肝炎とHIV感染の治療が近年驚異的な進歩を遂げ,HRにおいて感染症予防がもつ意義はかつてに比べて小さくなっている.
 そうしたなかで,著者自身,日々の薬物使用障害の臨床で感じている課題は,覚せい剤使用者の治療アクセスの悪さと治療脱落率の高さ14)である.それが,介入の遅れや,断薬困難に悩んだ末の破局的薬物使用―そして,その結果として生じる重篤な誘発性精神病や逮捕―を招いている.
 振り返ってみれば,あの危険ドラッグの数少ないメリットは,治療アクセスのよさにあった.著者の印象では,かつて危険ドラッグ使用者の多くは,初使用から数ヵ月程度で専門外来に受診していたが,他方,覚せい剤使用者の場合は,初使用から10~15年というかなり長い月日を経てから受診する傾向がある.決してその間何も問題がないわけではなく,精神症状の発現はもとより,逮捕・服役の果てに家族や仕事,人間関係などを失っている.それにもかかわらず,なかなか治療にアクセスしない.その理由はおそらく2つある.1つは,「犯罪者」というセルフスティグマの影響であり,もう1つは,医療者による屈辱的な扱いや警察通報の不安である.
 その意味では,覚せい剤使用による最大のharmは刑罰といえるのかもしれない.実際,平成30年版犯罪白書によれば10),覚せい剤取締法違反による検挙者数,および刑務所入所者数は最近15年間一貫して横ばいであるにもかかわらず,同違反による検挙者の高齢化傾向と刑務所再入所率の増加傾向は年々進行している.この事実は,「同じ人間が繰り返し逮捕・収監され,いたずらに年を重ねている」という厳しい現実を示し,刑事司法手続きが覚せい剤使用者の再犯防止には役立っていない可能性,それどころか,かえって回復を阻害している可能性すら疑わせる.
 もちろん,だからといって著者は,「覚せい剤の使用・所持を非犯罪化せよ」というつもりはない.確かに規制と刑罰は新規の覚せい剤使用者の低減に貢献してきた可能性はある.しかし,少なくとも治療の場では,医療者が守秘義務遵守を優先し,覚せい剤使用者が安心して相談でき,蔑まれたり拒絶されたりしない環境が必要である.それは,海外と比べるとささやかではあるが,わが国におけるHRの第一歩として最も現実的かつ喫緊の対策といえるであろう.
 それからもう1つ,従来の「ダメ.ゼッタイ.」という薬物乱用防止の啓発のあり方を再考することも,実現可能なHR実践である.「一回やったら人生が破滅」といった非現実的なスローガンや,薬物使用者を恥辱的な表現で描写する啓発をやめ,乱用予防に併せて,薬物使用障害が解決可能な問題であることを伝える必要がある.
 なお,従来の社会的スティグマによって「最初の薬物使用」を防ごうとする啓発こそが,現在,国内各地で問題となっている民間薬物依存症回復施設「ダルク」設立反対運動を生み出す偏見や差別意識を助長してきたのはまちがいないだろう.その意味では,関係機関ならびに関係者は,自身が当事者の孤立を促し,回復を阻害してきたことを猛省すべきである.

おわりに
 数年前,オーストラリアのシドニー市に設置された注射室を訪れた際,著者は,壁に貼られたポスターの言葉を読んで仰天した.曰く,「覚せい剤を使うときには,できるだけ仲間と使おう」「きちんと食事をとって,水分補給も忘れないようにしよう」「連続して使わないで,一区切りついたらしっかり睡眠をとろう」.いずれも,覚せい剤使用者に向けたメッセージである.こうしたメッセージは,覚せい剤使用による健康被害を低減するとともに,使用に際しての罪悪感を低減し,被害関係妄想や追跡妄想の発現を抑制することが意図されたものだという.
 その際,注射室常駐の看護師があるエピソードを紹介してくれた.注射室が設置されてから,あるひとり親の女性がふらりとやってきては,薬物を注射したついでに,看護師に子育ての相談をするようになったという.その結果,子どもはさまざまな児童福祉的支援を受けることになった.さらには驚くべきことに,その女性もいつしか自ら断薬治療プログラムに参加するようになったのである.従来ならば,薬物使用の後ろめたさからどこにも相談できないまま薬物使用を続け,最悪,子どもはネグレクトの末に死亡した可能性さえあった.実際,ある時期,シドニー市ではそうした悲劇的な事件が多発していたという.
 冒頭にも述べたが,HRは決して薬物汚染が深刻な国の「苦肉の策」ではない.むしろそれは,厳罰政策の限界から出発した,効果的な公衆衛生政策と支援実践の理念である.そして何よりもHRは,薬物使用者の人権を尊重し,厳罰政策によって支援から疎外された人間を孤立から救い出すための倫理的実践である.そのことを強調して,本稿の締めくくりとしたい.

 編  注:編集委員会からの依頼による総説論文である.

 なお,本論文に関連して開示すべき利益相反はない.

文献

1) Collins, S. E., Clifasefi, Logan, D. E., et al.: Current status, historical highlights, and basic principles of harm reduction. Harm Reduction, 2nd ed: Pragmatic Strategies for Managing High-Risk Behaviors (eds by Marlatt, G. A., Larimer, M. E., et al.). Guilford Press, New York, p.3-35, 2011

2) Csete, J., Grob, P. J.: Switzerland, HIV and the power of pragmatism: lesson for drug policy development. Int J Drug Policy, 23 (1); 82-86, 2012
Medline

3) Csete, J., Kamarulzaman, A., Kazatchkine, M., et al.: Public health and international drug policy. Lancet, 387 (10026); 1427-1480, 2016
Medline

4) Engel, C.: Wild Health: Lessons in Natural Wellness from the Animal Kingdom. Houghton Mifflin Harcourt, Boston, 2003

5) Funada, D., Matsumoto, T., Tanibuchi, Y., et al.: Changes of clinical symptoms in patients with new psychoactive substance (NPS)-related disorders from fiscal year 2012 to 2014: a study in hospitals specializing in the treatment of addiction. Neuropsychopharmacol Rep, 39 (2); 119-129, 2019
Medline

6) Global Commission on Drug Policy: War on Drugs: Report of the Global Commission on Drug Policy. 2011 (https://www.globalcommissiondrugs.org/wp-content/uploads/2017/10/GCDP_WaronDrugs_EN.pdf) (参照2019-08-12)

7) Hall, W.: Reducing the toll of opioid overdose deaths in Australia. Drug and Alcohol Review, 18 (2); 213-220, 2009

8) 林 神奈: 研究者がアドボカシーを行うためにできること―バンクーバーにおけるハームリダクション事情と研究者の関わり―ハームリダクションとは何か―薬物問題に対する, あるひとつの社会的選択― (松本俊彦, 古藤吾郎ほか編著). 中外医学社, 東京, p.84-95, 2017

9) Hidaka, Y., Ichikawa, S., Koyano, J., et al.: Substance use and sexual behaviours of Japanese men who have sex with men: a nationwide internet survey conducted in Japan. BMC Public Health, 6; 239, 2006
Medline

10) 法務省: 平成30年版犯罪白書. 2018

11) 板倉聖宣: 禁酒法と民主主義. 仮説社, 東京, 1983

12) Kamijo, Y., Takai, M., Fujita, Y., et al.: A multicenter retrospective survey of poisoning after consumption of products containing novel psychoactive substances from 2013 to 2014 in Japan. Am J Drug Alcohol Abuse, 42 (5); 513-519, 2016
Medline

13) Khantzian, E. J.: The self-medication hypothesis of addictive disorders: focus on heroin and cocaine dependence. Am J Psychiatry, 142 (11); 1259-1264, 1985
Medline

14) Kobayashi, O., Matsumoto, T., Otsuki, M., et al.: Profiles associated with treatment retention in Japanese patients with methamphetamine use disorder: preliminary survey. Psychiatry Clin Neurosci, 62 (5); 526-532, 2008
Medline

15) Lin, T., Chen, C. H., Chou, P.: Effects of combination approach on harm reduction programs: the Taiwan experience. Harm Reduct J, 13 (1); 23, 2016
Medline

16) Marlatt, G. A.: Harm reduction: come as you are. Addict Behav, 21 (6); 779-788, 1996
Medline

17) 松本俊彦, 宮川朋大, 矢花辰夫ほか: 精神症状出現にマジックマッシュルーム摂取が関与したと考えられる2症例. 精神医学, 41 (10); 1097-1099, 1999

18) Matsumoto, T., Okada, T.: Designer drugs as a cause of homicide. Addiction, 101 (11); 1666-1667, 2006
Medline

19) Matsumoto, T., Tachimori, H., Takano, A., et al.: Recent changes in the clinical features of patients with new psychoactive-substances-related disorders in Japan: comparison of the Nationwide Mental Hospital Surveys on Drug-related Psychiatric Disorders undertaken in 2012 and 2014. Psychiatry Clin Neurosci, 70 (12); 560-566, 2016
Medline

20) 松本俊彦: 「危険ドラッグ・フィーバー」から考えるハームリダクション―規制強化は個人とコミュニティに何をもたらしたか―. ハームリダクションとは何か―薬物問題に対する, あるひとつの社会的選択― (松本俊彦, 古藤吾郎ほか編). 中外医学社, 東京, p.27-49, 2017

21) 松本俊彦, 宇佐美貴士, 船田大輔ほか: 全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査. 平成30年度厚生労働科学研究費補助金 (医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業) 薬物乱用・依存状況等のモニタリング調査と薬物依存症者・家族に対する回復支援に関する研究 (研究代表者: 嶋根卓也) 総括・分担研究報告書. p.75-141, 2019

22) みなみおさむ: ハームリダクションを医療者・医療ユーザーに伝える―カナダ・トロント市での実践から―. ハームリダクションとは何か―薬物問題に対する, あるひとつの社会的選択― (松本俊彦, 古藤吾郎ほか編著). 中外医学社, 東京, p.71-83, 2017

23) Naning, H., Kerr, C., Kamarulzaman, A., et al.: Return on investment and cost-effectiveness of harm reduction programm in Malaysia. World Bank, 2014

24) 岡本 勝: 禁酒法―「酒のない社会」の実験. 講談社, 東京, 1996

25) 佐藤哲彦: 覚醒剤の社会史―ドラッグ・ディスコース・統治技術―. 東信堂, 東京, 2006

26) 佐藤哲彦: ドラッグの社会学―向精神物質をめぐる作法と社会秩序―. 世界思想社, 京都, 2008

27) Singh, D., Chawarski, M. C., Schottenfeld, R., et al.: Substance abuse and the HIV situation in Malaysia. J Food Drug Anal, 21 (4); S46-51, 2013
Medline

28) 徐 淑子, 池田光穂: ハームリダクション入門. (https://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/141025sookj.html) (参照2019-08-12)

29) Tanibuchi, Y., Matsumoto, T., Funada, D., et al.: The influence of tightening regulations on patients with new psychoactive substance-related disorders in Japan. Neuropsychopharmacol Rep, 38 (4); 189-196, 2018
Medline

30) Tatarsky, A., Kellogg, S.: Harm reduction psychotherapy. Harm Reduction, 2nd ed: Pragmatic Strategies for Managing High-Risk Behaviors (eds by Marlatt, G. A., Larimer, M. E., et al.). Guilford Press, New York, p.3-35, 2011

31) United Nations Office on Drugs and Crime: World Drug Report 2016 (https://www.unodc.org/doc/wdr2016/WORLD_DRUG_REPORT_2016_web.pdf) (参照2019-08-12)

32) Urban Health Research Initiative: Findings from the evaluation of Vancouver's pilot medically supervised safer injecting facility-insite. British Columbia Centre for Excellence in HIV/AIDS (http://www.bccsu.ca/wp-content/uploads/2016/09/insite-report-eng.pdf) (参照2019-08-12)

33) Wodak, A.: The abject failure of drug prohibition. Aust N Z J Criminol, 47 (2); 190-201, 2014

34) Wodak, A. (古藤吾郎訳) : 世界は違法薬物にどう対応することができるか?ハームリダクションとは何か―薬物問題に対する, あるひとつの社会的選択― (松本俊彦, 古藤吾郎ほか編著). 中外医学社, 東京, p.52-70, 2017

35) Wood, E., Tyndall, M. W., Montaner, J. S., et al.: Summary of findings from the evaluation of a pilot medically supervised safer injecting facility. CMAJ, 175 (11); 1399-1404, 2006
Medline

Advertisement

ページの先頭へ

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology