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論文全文

第124巻第6号

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連載 ICD-11「精神,行動,神経発達の疾患」分類と病名の解説シリーズ
各論⑮
不安又は恐怖関連症群
藤井 泰, 朝倉 聡
北海道大学大学院医学研究院神経病態学分野精神医学教室
北海道大学保健センター
精神神経学雑誌 124: 409-415, 2022

 ICD-10で「F4神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害」と1つのカテゴリーに分類されていたもののなかから,とりわけ不安または恐怖を中核とするものを抽出して独立させたのが本疾患群である.分離不安症や場面緘黙も同じ中核的要素を共通点として,ここに分類されることとなった.先行して刊行されたDSM-5においてDSM-IVの不安障害から,強迫症および関連症群と心的外傷およびストレス因関連障害群が新たなカテゴリーとして独立し,分離不安症および選択性緘黙(場面緘黙)が不安症群として整理されたことと足並みをそろえている.ICD-10の恐怖症性不安障害,他の不安障害がおおむね該当するが,混合性不安抑うつ障害が,混合抑うつ不安症として気分症群に分類されることとなった.当事者に対する偏見の軽減や社会に馴染みやすくするという観点から,2014年のDSM-5日本語版よりanxiety disorderの訳語である「不安障害」は,「不安症」という名称に変更されている.また,ICD-11の用語検討にあたり,selective mutismの訳語である「選択性緘黙」は,選択性という語は,当事者の意志で発語しないことを選択しているという誤解を与えやすいので,特定の場面で話せないという状態像を重視した用語が望ましいとの当事者の意見や,場面緘黙関連団体連合会からの要望もあり,「場面緘黙」が採用されるに至っている.不安または恐怖を中核とする疾患群をまとめることで,ICD-10よりも診断の明確さ,臨床における有用性は向上していると考えられる.一方で,気分症群,強迫症又は関連症群との関係や,不安又は恐怖関連症群のなかでの併存の問題,パニック発作の扱いなど,今後も検討を続けていくことが必要であろう.

索引用語:不安症, 恐怖症, パニック症, 場面緘黙>

はじめに
 ICD-10で「F4神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害」と1つのカテゴリーに分類されていたもののなかから,とりわけ不安または恐怖を中核とするものを抽出して独立させたのが本疾患群である.分離不安症や場面緘黙も同じ中核的要素を共通点として,ここに分類されることとなった.先行して刊行されたDSM-5においてDSM-IVの不安障害から,強迫症および関連症群と心的外傷およびストレス因関連障害群が新たなカテゴリーとして独立し,分離不安症および選択性緘黙(場面緘黙)が不安症群として整理されたことと足並みをそろえている.ICD-11では,恐怖症性不安障害と他の不安障害というICD-10の区別は廃止され,より臨床的に有用な方法として,不安および恐怖に関連する各疾患をその懸念(不安,生理的過覚醒,不適応的な行動反応を引き起こすものとして本人が報告した刺激)の焦点に基づいて特徴づけることになった12)

Ⅰ.不安又は恐怖関連症群に含まれる疾患
 2014年のDSM-5日本語版より従来のanxiety disorderの訳語である「不安障害」は,「不安症」という名称に変更されている.当事者に対する偏見の軽減や社会に馴染みやすくするという観点から,それまで一般社会に普及していた「不安神経症」から「神経」をとった「不安症」が提案された13).ICD-10の恐怖症性不安障害(F40),他の不安障害(F41)がおおむね該当するが,混合性不安抑うつ障害(F41.2)が,混合抑うつ不安症(6A73)として気分症群に分類されることとなった.ICD-10との対照表をに示す.

1.全般不安症(6B00)
 ICD-10の全般性不安障害(F41.1)に該当する.全般不安症は,少なくとも数ヵ月間あるいはより多くの期間にわたって持続する顕著な不安症状を特徴とし,全般的な不安(すなわち「漠然とした不安」)や,たいていは家族,健康,経済,学校や仕事における日常の複数の出来事に関する過度の心配が,筋緊張や落ち着きのなさ,交感神経系の過活動,緊張感の自覚,集中力の維持困難,イライラ,睡眠障害などの症状とともに現れる.その症状のために,個人,家族,社会,教育,職業,その他の重要な機能領域に有意な苦痛または障害が生じる.DSM-5とICD-11では,診断に必要とされる期間と不安の症状に相違点がある.DSM-5では,全般不安症の症状持続期間は最低でも6ヵ月であるが,ICD-11では,「少なくとも数ヵ月間」症状が続いていることのみが要求されている.これは,6ヵ月未満の全般不安症様症状を呈する者は,6ヵ月以上のエピソードを呈する者と,発症年齢,持続期間,障害の程度,併存症,家族歴,社会人口統計学的相関の点で類似しているというエビデンスによる.また,ICD-11では,診断の根拠として,いかなる環境状況にも制限されない全般的な不安(いわゆる「浮動性不安」)も認めている.これは,悩みの認知内容を説明できない患者がいることや,DSM-5の要件を異文化間で適用すると症例を見逃す可能性があるというエビデンスによって裏づけられている1).ICD-10とは対照的に,ICD-11では,気分エピソードとは関係なく不安症状が存在する限り,全般不安症は抑うつ症群と併発する可能性があると規定されている.同様に,ICD-10の他の階層的な除外規則(例えば,全般性不安障害は恐怖症性不安障害や強迫性障害と一緒に診断することはできない)も,ICD-11では症候学的特徴がより明確に定義されていることや,これらの規則が別個の特定の臨床的注意を必要とする状態の検出や治療を妨げているという証拠があるため,廃止されている12)

2.パニック症(6B01)
 ICD-10のパニック障害(F41.0)に該当する.パニック症は,特定の刺激や状況に限定されない,予期しないパニック発作が繰り返し起こることを特徴とする.パニック発作は,急速かつ同時に出現するいくつかの特徴的な症状(例:動悸や心拍数の増加,発汗,ふるえ,息切れ,胸痛,めまいやふらつき,寒気,ほてり,死の恐怖)を伴った,強度の恐怖や不安の際立ったエピソードである.さらに,パニック症は,パニック発作の再発や重大性についての持続的な懸念,または再発を回避するための行動によって特徴づけられ,その結果,個人,家族,社会,教育,職業,その他の重要な機能領域に有意な障害をもたらす.パニック発作は不安又は恐怖関連症群と同様,他の精神疾患でも起こりうるため,パニック発作そのものとパニック症は同義ではない.他の精神疾患において恐怖刺激の曝露または予測に完全に反応して起こるパニック発作(例えば,社交不安症における人前で話すこと)は,パニック症の追加診断に該当しないことが示されており,「パニック発作を伴う」という特定用語で表現する12).パニック症は,頻回のパニック発作再発,パニック発作やその解釈に関する持続的心配や懸念,パニック発作後の持続的行動の変化(例えば,回避),および関連して生じる重大な機能障害の点から,正常な恐怖反応とは区別される.

3.広場恐怖症(6B02)
 ICD-10の広場恐怖[症](F40.0)に該当する.広場恐怖症は,公共交通機関の利用,人混み,一人での外出(例:店舗,劇場,行列)など,逃れることが困難であったり,助けが得られないかもしれなかったりなどの複数の状況に反応して生じる,顕著で過剰な恐怖または不安を特徴とする.当人は,特定の否定的な結果(例:パニック発作や,制御困難だったり困惑させられるような身体的症状)への恐怖をまねくこれらの状況に対して常に不安を感じており,これらの状況は,積極的に回避されたり,信頼できる仲間がいるような特定の場合のみ参加できたり,あるいは強い恐怖や不安を感じながら耐えられたりしている.症状は少なくとも数ヵ月間持続し,個人,家族,社会,教育,職業,その他の重要な機能領域において有意な苦痛または障害をもたらすほど深刻である.ICD-10では,広場恐怖[症]を社会[社交]恐怖[症]や特異的(個別的)恐怖症と並ぶ恐怖症の中心的な障害と理解し,パニック発作は恐怖症の重症さの表現であるとして,パニック障害併存の有無を下位診断としていた.ICD-11でも,パニック発作を併存する場合には追加のコードを使用することとなっている.一方,DSMでは,DSM-III-RからDSM-IV-TRまではパニック障害の結果,広場恐怖が生じるとの考えのもと,広場恐怖はパニック障害の下位概念と考えられていたが,DSM-5で再び独立した疾患として扱われるようになっている5).ICD-11では,広場恐怖症は,脱出が困難であったり,助けが得られなかったりするような複数の状況,またはそのような状況を予期して起こる,顕著で過剰な恐怖または不安として概念化されている.恐怖の焦点は,それらの状況で無力になったり,恥ずかしい思いをしたりするような特定の否定的な結果に対する恐怖であり,ICD-10における,開けた場所や,安全な場所に避難することが困難な人混みなどの状況に対する恐怖というより狭い概念とは異なっている12)

4.限局性恐怖症(6B03)
 ICD-10の特異的(個別的)恐怖症(F40.2)に該当する.限局性恐怖症は,1つあるいは複数の特定の物体や状況(例:特定の動物の接近,飛行,高所,閉鎖空間,血や傷を見ること)に曝露されたり,曝露されることを予期したりすると,実際の危険性とは見合わない,顕著で過剰な恐怖や不安を常に抱くことを特徴とする.恐怖症の対象物や状況は避けられるか,さもなければ強い恐怖や不安に耐えられている.症状は少なくとも数ヵ月間持続し,個人,家族,社会,教育,職業,またはその他の重要な機能領域において有意な苦痛または有意な障害をもたらすほど深刻である.ICD-10では,恐怖症的状況は可能な限り回避されるとしていたが,ICD-11では,積極的な回避のほかに,恐怖対象や状況は強い恐怖や不安をもちながら耐える場合も該当するとされた.

5.社交不安症(6B04)
 ICD-10の社会[社交]恐怖[症](F40.1)に該当する.社交不安症は,対人的な交流(例:会話をする),観察されていると感じながら何かをする(例:人前で飲食をする),人前でパフォーマンスをする(例:スピーチをする)など,1つ以上の対人的状況で一貫して起こる顕著で過度な恐怖や不安を特徴とする.当人は,他人から否定的に評価されるような行動をとったり,不安症状を示したりすることを心配している.関連する対人的状況は一貫して回避されるか,さもなければ強い恐怖や不安に耐えられている.症状は少なくとも数ヵ月間持続し,個人,家族,社会,教育,職業,またはその他の重要な機能領域において有意な苦痛または障害をもたらすほど十分に深刻である.小児期の社交不安症はICD-10では,小児期に特異的に発症する情緒障害(F93)の下位カテゴリーに分類されていた.小児期に特異的に発症する情緒障害は,小児期および青年期と成人期の間で発症に不連続性があること,質的に異常な現象というよりは,むしろ正常な発達傾向が誇張されたものであることから成人期の神経症性障害(F40~48)と区別されていた.ICD-11では,神経発達に関連する問題を神経発達症群としてグループ分けし,神経発達が正常であり,発症時期により分類されていた小児期に特異的に発症する情緒障害は該当するカテゴリーがなくなり,臨床的特徴を軸に各々該当する疾患群に分類されることとなった.

6.分離不安症(6B05)
 分離不安症は,ICD-10では小児期に特異的に発症する情緒障害(F93)の下位カテゴリーに分類されていたが,小児期の社交不安症と同様に,不安症状に着目し,不安又は恐怖関連症群に分類されることとなった.分離不安症は,特定の愛着者との分離に対する有意な過度の恐怖または不安を特徴とする.小児および青年では,分離不安は典型的には養育者,両親または他の家族を対象とし,その恐怖または不安は発達上正常と考えられる範囲を超えている.成人の場合,典型的には,恋愛相手や子どもが対象となる.分離不安の症状には,愛着者に危害や不都合な出来事が起こるのではないかと考えること,学校や職場に行きたがらないこと,分離時に繰り返し起こる過度の苦痛,愛着者と離れて眠ることを嫌がるまたは拒否すること,分離に関する繰り返しの悪夢などがある.症状は少なくとも数ヵ月間持続し,個人,家族,社会,教育,職業,またはその他の重要な機能領域において有意な苦痛または有意な障害をもたらすほど十分に深刻である.

7.場面緘黙(6B06)
 場面緘黙はICD-10では小児期および青年期に特異的に発症する社会的機能の障害(F94),DSM-IV-TRでは通常,幼児期,小児期,または青年期に初めて診断される障害のカテゴリーに分類されていたが,DSM-5では,不安症状を重視し不安症群に含まれるようになった.DSM-5でもselective mutismの訳語である選択性緘黙という用語がDSM-IV-TRを踏襲してあてられている.これに対して,選択性という語からは,当事者の意志で発語しないことを選択しているという誤解を与えやすいので,特定の場面で話せないという状態像を重視した場面緘黙という用語が望ましい4)との当事者の意見や,場面緘黙関連団体連合会からの要望もあり,場面緘黙が採用されるに至っている.場面緘黙は,子どもが特定の対人的状況(典型的には家庭)では十分な言語能力を発揮するが,他の対人的状況(典型的には学校)では一貫して言葉を話さないという,一貫した緘黙場面の選択性を特徴とする.その障害は少なくとも1ヵ月間続き,入学後1ヵ月間に限定されず,学業達成や対人的コミュニケーションに支障をきたすほど深刻である.話すことができないのは,対人的状況で必要とされる話し言葉を知らないことや,話し言葉に慣れていないこと(例:学校で話されている言語と家庭で話されている言語が異なる場合など)が原因ではない.

8.不安又は恐怖関連症,他の特定される(6B0Y)
 ICD-10における他の恐怖症性不安障害(F40.8),他の特定の不安障害(F41.8)が該当する.

9.不安又は恐怖関連症,特定不能(6B0Z)
 ICD-10における恐怖症性不安障害,特定不能のもの(F40.9),不安障害,特定不能のもの(F41.9)が該当する.

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Ⅱ.考察
 DSM-5と同様,不安または恐怖を中核とする疾患群をまとめることで,カテゴリーとして非常に明確になったと思われる.WHOが実施した不安症又は恐怖関連症群の調査11)では,ICD-11の診断精度と臨床的有用性はICD-10と同様かそれ以上であり,臨床家の評価も高かった.一方で,ICD-11で導入された変更点のうち,実際の臨床家がガイドラインを適用する際に特に困難が伴うと考えられる点として,(i)不安症の診断閾値と,悩みや社交不安の診断閾値以下の変動を識別すること,(ii)該当する不安症の不安の焦点(例えば,社交不安症の人前で話すこと,広場恐怖症の人混みなど)への曝露や予期に反応して特異的に発生したパニック発作と,予期せぬあるいはきっかけがなく発生したパニック発作を区別することの2点が指摘されている.
 気分症群に併存する不安または恐怖症状について,併存とするのか気分症群の症状とするのかについては問題が残っている.気分症群に併存する不安症状は,不安又は恐怖関連症群の診断基準を満たさないのであれば,気分エピソード中の顕著な不安症状(6A80.0)あるいは気分エピソード中のパニック発作(6A80.1)と補助的または追加的にコードされることとなっている.また,抑うつ症群,不安又は恐怖関連症群,それぞれの症状を部分的に有していながら,どちらの診断基準も満たさない混合抑うつ不安症については,診断の信頼性が低かったためDSM-5では採用が見送りになっていたが,ICD-11では,気分症の1つとして新たに採用された.混合抑うつ不安症は,プライマリケア医が心理的苦痛により重度の障害を伴っていると疑う患者のなかで,不安を伴わないうつ病やうつ病を伴わない不安症よりも最も一般的な診断であることが報告されている3).また,プライマリケア医が,複数の苦痛を伴う身体症状を呈していたり,症状が医学的には十分に説明されないことに対する大きな不安を抱えていたりすると判断した患者のなかで,混合抑うつ不安症の有病率が高く,特に不安を伴わないうつ病よりも多いことがわかっている2).混合抑うつ不安症は,抑うつと不安の両方の症状が2週間以上の期間の多くの日に現れることを特徴とし,抑うつ症あるいは不安又は恐怖関連症のいずれの診断要件を満たすほど重度ではない.躁エピソードあるいは混合エピソードの既往がある場合には,双極性又は関連症の診断が適切であり,特定用語として,「顕著な不安症状を伴う」を付加することも可能である.抑うつ症あるいは不安又は恐怖関連症の診断要件を満たす場合にはそれらを優先し,抑うつ症の診断要件を満たす場合には,双極性又は関連症と同様,特定用語として「顕著な不安症状を伴う」を付加することも可能である.一方で,不安又は恐怖関連症の診断要件を満たし,気分症の診断閾値以下の抑うつ症状を併存する場合の特定用語はない.
 文化結合症候群とされてきた「対人恐怖」のうち,「緊張型(sensitive subtype)対人恐怖」14)(DSM-5日本語版の訳語は過敏型)については社交不安症とほぼ同等であるが,重症型とされる「確信型(offensive subtype)対人恐怖」14)(DSM-5日本語版の訳語は不快型)に分類される「醜貌恐怖」および「自己臭恐怖」については,DSM-5ではそれぞれshubo-kyofu,jikoshu-kyofuと日本語名のまま,他の特定される強迫症および関連症に分類されることとなった.それに倣った形で,ICD-11では,「醜貌恐怖」は身体醜形症(6B21),「自己臭恐怖」は自己臭関係付け症(6B22)として,とらわれと繰り返し行為を中核的な病理とする,強迫症又は関連症群に分類された8).身体醜形症を,強迫症との関連で論じるのか,社交不安症との関連で論じるのかについては,従来,診断学的に議論が行われてきた7).「自己臭恐怖」「醜貌恐怖」を「対人恐怖」つまり不安または恐怖の枠組みのなかで論じることもわが国では従来提案されてきた6)14).ICD-11では,社交不安症と身体醜形症の鑑別については,身体醜形症では社交不安症と異なり,懸念は本人の振る舞いや外観の対人的状況における評価ではなく,自らが知覚する欠陥が他人にどう評価されるかに限定されていることを挙げている.自分の外見の欠点にばかり注目するのではなく,もっと広い範囲に関心があり,社交不安症の他の症状がみられる場合は,両者を診断してよいとしている.また,社交不安症と自己臭関連付け症の鑑別については,社交不安症では,自分の行動や不安症状が他者から否定的に評価されることを心配して対人的状況を回避するのに対して,自己臭関係付け症では,自分が悪臭を放っていると信じているがために対人的状況を回避するとしている.身体醜形症と自己臭関係付け症は,ともに併存疾患としてはうつ病が最も一般的であるが,双方とも社交不安症,強迫症の併存率がそれぞれ4割程度と同等であることが報告されている9)10).何を中核的な病理ととらえるかによって治療戦略も異なってくると考えられる.

おわりに
 ICD-11における不安又は恐怖関連症群について概説した.不安または恐怖を中核とする疾患群をまとめることで,ICD-10よりも診断の明確さ,臨床における有用性は向上していると考えられる.一方で,気分症群,強迫症又は関連症群との関係や,不安又は恐怖関連症群のなかでの併存の問題,パニック発作の扱いなど,今後も検討を続けていくことが必要であろう.

 なお,本論文に関連して開示すべき利益相反はない.

 注:コード,記載は2022年2月付のICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics(https://icd.who.int/browse11/l-m/en)を参照している.

文献

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