Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文全文

第124巻第12号

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連載 ICD-11「精神,行動,神経発達の疾患」分類と病名の解説シリーズ
ICDの双極症混合エピソード―混合状態の医学史―
大前 晋
国家公務員共済組合連合会虎の門病院
精神神経学雑誌 124: 887-891, 2022

はじめに―Kraepelinの混合状態図式―
 はじめに検討を加えたいのは,Kraepelin, E.15)による躁うつ混合状態の図式である(図1).1904年の教科書第7版(以下「教科書」を略す)で発表された.Kraepelinはこの図式でいったい何を表現したかったのだろうか.
 これは躁うつ病,双極症(ICD-11)ないし双極性障害(DSM-5)の横断的特徴と縦断的特徴を表すらしい.縦軸が上・下の空間像あるいはプラス・マイナスの位相を,横軸が時間経過を表現している.すなわち縦軸が双極性(bipolarity),横軸が循環性(cyclicity)・反復性(recurrence)である.さらに精神機能を思考・気分・意欲の3部門に分割している.この3部門が別々に動いた結果,プラスとマイナスの位相が入り交じった状態,それを混合状態と呼ぶらしい.
 さて,精神機能の3部門すべてにプラスとマイナスがある.そのため理屈のうえでは,2の3乗で8通りから,3部門すべてがプラスの純粋躁とすべてがマイナスの純粋抑うつを減じた6型が混合状態に属する.具体的には,抑うつ性躁,激越性抑うつ*1,非生産性躁,躁性昏迷,観念奔逸性抑うつ,制止性躁である.
 しかし,この6型すべてを用いるわけではない.臨床で問題になる類型は,ほとんどが激越性抑うつである.確かに,不安を伴う抑うつ性躁の重症例も時に問題になるだろう.しかし,これは激越性抑うつとの境界づけが困難である.不安と焦燥と抑うつは分かちがたく結びついており,これらの類型は相互に行き来する.したがって,これらは別類型でなく,激越性抑うつの類型のもとに包括したい.そのほうが実情に即している.
 また,歴史的に重要な躁性昏迷は,現在カタトニアとの関連で再注目されている28).しかし,症例としては多くない.激越性抑うつとは明確に区別したほうが,記述や治療や情報交換にとって有用である.

図1画像拡大

1.図式の問題点,具象化の魔力
 Kraepelinの図式には実体の裏づけがない22).双極症とか混合状態とかいわれる現象が実在するのは確かである.しかしその基礎で,図式が表すような何か計測可能な実体すなわち化学伝達物質や血流や電気生理学的事象などが3部門に分かれて精神機能を分担していたり,それぞれの水準が高かったり低かったり,混じったりしているという裏づけはどこにもない.推論としての正当性を主張する議論もない.身体のどこかに思考・気分・意欲の座や,それらの双極性や混合を探したって,見つかりっこない.その場所は胆汁ではなくて海馬だとか,いや扁桃体だとかそういう問題ではない.思い込んだら試練の道どころか無限回廊である.貴重な研究費と研究者の汗の無駄遣いである.
 にもかかわらず,ついついわれわれは,この図式が何らかの実体を表していると思い込んでしまう.気分をセロトニン,意欲をノルアドレナリン,思考をドパミンがそれぞれ担当していて,それらが増えたり減ったり混じったりするとさまざまな精神病理が現れるかのように理解し,説明したくなってしまう.これは一般の人に限らない.精神科医療従事者や研究者も事情は同じである.この図式にはそれだけの魔力がある.精神医学領域に巣くう具象化(reification)の魔力である7).できるならば,その魔力は当初から封じ込めて遠ざけるにしくはないだろう.

2.激越性抑うつにおける不安・焦燥は躁状態の現れなのか
 図式から発するもうひとつの問題は,より重要である.激越性抑うつには,本当に躁状態の要素が「混合」しているのだろうか.この件について説得力のあるエビデンスがない.
 もとより抑うつ状態に不安・焦燥はつきものである.19世紀後半までのメランコリーの記載は,抑うつ気分よりも不安・焦燥そして罪業妄想が優位である.ここに躁の混合を指摘する向きはどこにもない.1896年第5版13)からKraepelinの教科書に躁うつ混合状態が記載されたが,そこに激越性抑うつはない.あるのは躁性昏迷だけである.当初Kraepelinの混合状態は,Kahlbaum, K. L.のカタトニーのうち予後良好類型を周期性精神障害(1899年の第6版から躁うつ性精神病14))に呼び込むために設定された23).激越性抑うつは対象外だったのである.
 1904年第7版15)の図式とともに潮目は変わった.Kraepelinは,部下Weygandt, W.による研究成果30)を踏まえて混合状態を再編した.そこで激越性抑うつがセンターにおどり出た.Kraepelinは激越性抑うつを表すために図式を描いたわけではない.躁性昏迷を表すために描いた図式に,たまたま激越性抑うつの位置を見いだした*2.それが真相である.
 1913年出版の第8版17)では,それまで独立していたメランコリーが,躁うつ性精神病に組み入れられた.これは,Kraepelinの部下Dreyfus, G. L.の研究成果6)を反映している.根拠はふたつあった.ひとつは経過研究における予後の一致である.当初メランコリーは予後不良と思われていたが,実際には躁うつ性精神病と同じように,回復を示す例が少なくなかった.もうひとつは,メランコリー性の激越性抑うつから,躁うつ性精神病の混合状態へのラベル貼り替えである.Dreyfus6)は「私はメランコリーを躁うつ性混合状態と理解している」,Kraepelin16)は「Dreyfusは,私が退行期メランコリーとして区分した症例が,実際には意志抑制が興奮で置き換えられた躁うつ性精神病の混合状態にすぎないと推論している」とそれぞれ述べている.図式がメランコリー消去のきっかけを与えたのである.激越性抑うつが躁うつ混合状態に呼びこまれたのはたまたまだったのに,この段階でKraepelinにとってはすでに既成事実と化していた.これが具象化の魔力である.

図2画像拡大

3.図式はKraepelinの真意を必ずしも反映していない
 Kraepelinにとって躁うつ性精神病の主要特徴は,躁-抑うつの双極性ではない.経過の循環性・反復性である.すなわち混合状態図式は彼の真意を必ずしも反映していない.彼にとって単極性反復性うつ病(抑うつ症)と双極性障害(双極症)との違いは本質的でない.まとめて躁うつ性精神病である.
 実際にKraepelinは1896年の段階から「躁性興奮と精神的抑うつはまったく対立するものではなくて,むしろ同じあるいは近縁の基底状態が表している異なった現象形態にすぎない」13)と論じている.激越性抑うつについても,躁-うつの「相反する」「極性の」「混合」という具体的な図式を彼は想定していない.躁うつ性精神病の経過において,共通する(生物学的)基底状態が偶発的に激越性抑うつを表すという以上の含みはない.
 当時のドイツの精神科医たちのほとんどは,具象化の魔力に惑わされなかった.Jaspers, K.9)は図式にさっそく批判を加えている.JaspersによればKraepelinは,本来了解心理学の文脈で取りあげるべき諸要素を,無造作に客観的心理学の諸成分や諸因子に還元してしまっている.これは先に論じた,図式が何の実体も反映していないという指摘を別の視点から表現したものである.その後,精神医学からいったん混合状態は忘れられてしまう*3

4.近年の抑うつ性混合状態研究
 DSM-IIIからDSM-IV-TRにおける混合状態では,躁病エピソードと大うつ病エピソード双方の基準の1週間以上の持続が要求された.抗うつ薬など身体的治療による躁転は除外規定である.これは文字通り躁性症状と抑うつ性症状の足し算すなわち混合である.このとき躁とうつは双極・対極である必要はない.精神機能が3部門に分かれている必要もない.したがってここに,理論的な欠陥が発生する余地はない.その代わりに,臨床で遭遇する機会がきわめて少ない.有用性に欠ける概念である.
 これではKraepelinによる混合状態研究の豊潤さが,現代の気分障害臨床に生かされない.そこで一部の研究者たちが立ち上がった.彼らの言い分は次の通りである.躁/軽躁性混合状態(躁/軽躁病エピソード基準プラス診断閾下の抑うつ症状いくつか),あるいは抑うつ性混合状態(抑うつエピソード基準プラス診断閾下の躁/軽躁症状いくつか)も認めるべきだ.臨床における有用性を見越して,抗うつ薬による躁転も混合状態に含めるべきだ.抗うつ薬処方中の賦活症候群(activation syndrome)も積極的に取りこむべきだ.彼らの新たな混合状態研究は,新規抗うつ薬の幅広い処方と,それがもたらす有害事象に並行して注目を浴びるに至った.
 近年の抑うつ性混合状態研究にはふたつの潮流がある21).ひとつは従来からの激越性抑うつにおける躁的要素の再評価である.Koukopoulos, A.ら11)12)による激越性抑うつ研究は,全症例に対してアンヘドニアと興味の喪失を認めている.すなわち古典的な内因性抑うつが対象である.その特徴は「沈んだ不安な気分と,内的精神的な焦燥が臨床像を支配する.精神運動性焦燥は多くの症例でみられるが必須ではない.精神運動性焦燥を欠く症例では,内的な落ちつきのなさ(inner unrest)が主症状となる」とある.治療方針として,最も早急な改善が期待できるのはhaloperidolとclonazepamの併用であり,これらによって焦燥が改善し,一般的な制止優位の抑うつ像が続けば,amitriptylineなどの抗うつ薬も有効となると論じられている.
 いまひとつは,通常は境界性パーソナリティ障害ないしパーソナリティ症ボーダーラインパターン(ICD-11)の表現形態の一面とされる易刺激性と敵意そして精神運動性焦燥を,抑うつ性混合状態としてラベルを貼り替えて,双極スペクトラム障害に取りこんでしまおうという野心的な試みである.代表はAkiskal, H. S., Benazzi, F.ら2)4)5)である.彼らの易刺激性-敵意抑うつのほとんどは,気分の反応性をたもつ.したがって非内因性抑うつ,すなわち従来の神経症性抑うつや反応性抑うつが対象である.Akiskal1)によれば「境界性パーソナリティ障害は非常にしばしば『原始的な』防衛機制をもつ若年患者における感情スペクトラム障害である」.
 近年これらふたつの潮流が生まれた背景には,抑うつ症状を記述する用語の変更がある.抑うつ性の精神運動症状を,以前は抑制(独:Hemmung)と記述した.現代のICD-11, DSM-5では遅滞(英:retardation)と記述する.すなわち「抑えつけられている」から「遅い」への変更である.すると,「抑えつけられている」がゆえの重苦しさ・被圧迫感・苦悶,言いかえれば内的な不穏・興奮といったニュアンスが,「遅い」という表現では消えてしまう.そこで現代では,抑うつ状態における「重苦しさ・被圧迫感・苦悶,内的な不穏・興奮」の発生源として,新たに躁状態を想定する必要が出てくる.これは用語のおきかえが生んだ,アーチファクトとしての混合状態なのかもしれない.具象化の魔力は,ここでも跋扈している.

5.DSM-5とICD-11における混合状態
 DSM-5は,DSM-IV-TRまでの「混合性エピソード」を廃止して,特定用語「混合性の特徴」を設けた3).それは,躁病/軽躁病エピソードの基準を満たしたうえで,抑うつエピソードの基準に挙げられた症状から3項目以上,あるいは抑うつエピソードの基準を満たしたうえで,躁/軽躁エピソードの基準に挙げられた症状から3項目以上を伴うときに用いられる.すなわち診断閾上と閾下(ただし3項目以上)の組み合わせである.
 ICD-11はDSM-IV-TRとDSM-5の折衷的な立場である31).混合エピソードは残し,その定義を「いくつかの顕著な躁症状といくつかの顕著な抑うつ症状が存在し,それらは同時に起こるか非常に急速に交代する」としている.「いくつかの」の原文はseveralで,これは通常3から5あるいは6を指す.したがって,ICD-11の混合エピソードは,躁/軽躁エピソードと抑うつエピソード双方の診断閾下にある病態を含む.言いかえれば,必ずしも躁あるいは抑うつの診断閾上になくてもよい.すなわちDSM-5と違い,「合わせて一本」ありである.
 すなわちDSM-5とICD-11では,近年の研究で提案された躁/軽躁性混合状態と抑うつ性混合状態が,新たに公式の混合状態に迎え入れられている.ただしDSM-5の混合性の特徴を伴う抑うつエピソードでは,期間中の易怒性,注意散漫,精神運動性焦燥の諸項目は躁/軽躁症状とみなさないという除外規定が加えられている.これらは躁・うつ双方に重複する症状であるため,ことさらに混合と呼ぶに及ばないという理由による.ICD-11にこの除外規定はない.これがDSM-5とICD-11間の最大の違いである*4.ただしこの除外規定とその理由は,DSM-5ではいっさい解説されていない.混合状態の研究者たち29)が注意を払って熟読しない限り,発見と認識は困難である.
 このDSM-5における除外規定は,どうやらAkiskal,Benazziらを狙い撃ちしたものであるらしい.彼らの提案は,最終段階でDSM-5から闇討ちのようなかたちで拒絶されてしまった.ふたりとも亡きいま,反撃は困難である.もとより彼らの双極スペクトラム論は,境界性パーソナリティ障害のエキスパートたちから評判が悪い.Akiskalの双極性帝国主義(bipolar imperialism)など一時的流行(fad)にすぎない25).Paris, J.がそう揶揄した通りになるのかもしれない.

おわりに
 激越性抑うつは,制止優位の抑うつよりも自殺のリスクが高い.抗うつ薬による賦活のリスクも高い.経過・予後も不良な場合が多い.これらの経験則は,ほとんどの精神科医が共有している.臨床で細心の注意を払わなければならない病態である.
 ここで問いは最初に戻る.果たして激越性抑うつに,躁状態の混合を認めなければならないのだろうか.少なくともそこに妥当性10)24)はない.双極性障害や躁状態・抑うつ状態の病因や病態機序はいっさい判明していない.そのため,激越性抑うつにおける躁状態の混合は確かめる方法がない.妥当性の問いはナンセンスである.ならば説明原理は少ないほうがいい.躁状態の混合という仮説的・本質的な含みから自由な激越性抑うつの名称を守ったほうがいい.むやみに変更すべきでない.
 有用性はどうか.抗うつ薬を控え,抗精神病薬や気分調整薬の慎重な投与を考慮すべきという観点からは,混合状態と呼ぶのは悪くないかもしれない.しかし気分調整薬の効果も,非混合状態性の躁状態すなわち定型的な双極I型障害に比較すればずっと限定的である.何ら特効薬でないし,コンプライアンス不良がもたらす病状の不安定化や,生命を危険にさらす過量服薬のリスクは,抗うつ薬と少なくとも同等かそれ以上である.混合状態と呼ぶ有用性10)24)は大きいとはいえない.
 結論は次の通りである.混合状態の仮説自体は今後の研究に期待して温存するにしても,その臨床概念は激越性抑うつと躁性昏迷に分類して,消去してしまえばよいのではないか.それ以外の類型は,おそらくKraepelinの図式が具象化させたアーチファクトである.もし実在したならば,そのような貴重な症例は手持ちの類型に無理に押し込んだりせずに,個別例として活写するほうが望ましい.Akiskal,Benazziらの抑うつ性混合状態も,当初のように易刺激性-敵意抑うつという唯名論的かつ具体的な名称を用いればいい.何らかの本質を示唆しているにもかかわらず,その本質に対するエビデンスの不十分な病名は,誤解を避けるためにも諦めるべきだろう26)

 なお,本論文に関連して開示すべき利益相反はない.

 日本語以外の引用は,一部訳書を参照したが,その際も筆者自身が原著と比較検討のうえ翻訳し直した.したがって,引用個所の文責はすべて筆者にある.

文献

1) Akiskal, H. S.: Demystifying borderline personality: critique of the concept and unorthodox reflections on its natural kinship with the bipolar spectrum. Acta Psychiatr Scand, 110 (6); 401-407, 2004
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2) Akiskal, H. S., Benazzi, F.: Atypical depression: a variant of bipolar II or a bridge between unipolar and bipolar II? J Affect Disord, 84 (2-3); 209-217, 2005
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3) American Psychiatric Association: Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed: DSM-5TM. American Psychiatric Association, Arlington, 2013 (日本精神神経学会 日本語版用語監修, 髙橋三郎, 大野 裕ほか監訳: DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル. 医学書院, 東京, 2014)

4) Benazzi, F., Akiskal, H. S.: Irritable-hostile depression: further validation as a bipolar depressive mixed state. J Affect Disord, 84 (2-3); 197-207, 2005
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5) Benazzi, F.: Bipolar disorder: focus on bipolar II disorder and mixed depression. Lancet, 369 (9565); 935-945, 2007
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7) Hyman, S. E.: The diagnosis of mental disorders: the problem of reification. Annu Rev Clin Psychol, 6; 155-179, 2010
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8) 伊理正夫監, 浅野眞次, 天野一美ほか編: 電気・電子概論 実教出版, 東京, 1998

9) Jaspers, K.: Allgemeine Psychopathologie. Ein Leitfaden für Studierende, Ärzte und Psychologen. Springer, Berlin, 1913 (西丸四方訳: 精神病理学原論. みすず書房, 東京, 1971)

10) Kendell, R., Jablensky, A.: Distinguishing between the validity and utility of psychiatric diagnoses. Am J Psychiatry, 160 (1); 4-12, 2003
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11) Koukopoulos, A., Albert, M. J., Sani, G., et al.: Mixed depressive states: nosologic and therapeutic issues. Int Rev Psychiatry, 17 (1); 21-37, 2005
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12) Koukopoulos, A., Sani, G., Albert, M. J., et al.: Agitated depression: spontaneous and induced. Bipolar Disorders: Mixed States, Rapid Cycling and Atypical Forms (ed by Marneros, A., Goodwin, F. K.). Cambridge University Press, Cambridge, p.157-186, 2005

13) Kraepelin, E.: Psychiatrie, Ein Lehrbuch für Studierende und Ärzte, Fünfte, vollständig umgearbeitete Auflage. Barth, Leipzig, 1896

14) Kraepelin, E.: Psychiatrie, Ein Lehrbuch für Studierende und Ärzte, Sechste, vollständig umgearbeitete Auflage. II. Band. Klinische Psychiatrie, Barth, Leipzig, 1899

15) KraepelinE.: Psychiatrie, Ein Lehrbuch für Studierende und Ärzte, Siebente, vielfach umgearbeitete Auflage. Zweiter Band: Klinische Psychiatrie. Barth, Leibzig, 1904

16) Kraepelin, E.: Psychiatrie: Ein Lehrbuch für Studierende und Ärzte, Acthe, vollständig umgearbeitete Auflage. II. Band, Klinische Psychiatrie, I. Teil. Barth, Leipzig, 1910 (伊達 徹部分訳: 老年性精神疾患. みすず書房, 東京, 1992/西丸四方, 遠藤みどり部分訳: 精神医学総論. みすず書房, 東京, p.1-21, 1994)

17) Kraepelin, E.: Psychiatrie: Ein Lehrbuch für Studierende und Ärzte, Acthe, vollständig umgearbeitete Auflage. III. Band, Klinische Psychiatrie, II. Teil. Barth, Leipzig, 1913 (西丸四方, 西丸甫夫訳: 精神分裂病. みすず書房, 東京, 1986/西丸四方, 西丸甫夫訳: 躁うつ病とてんかん. みすず書房, 東京, 1986)

18) 宮本忠雄: 躁うつ病における混合状態の意義―臨床精神病理学的検討―. 臨床精神医学, 21 (9); 1433-1439, 1992

19) 森 宜人: フランクフルト国際電気技術博覧会とその帰結―近代ドイツにおける都市電力ネットワーク形成の一モデル―. 社会経済史学, 69 (5); 533-552, 2004

20) 森山公夫: 「躁とうつの内的連関について」・「両極的見地による躁うつ病の人間的類型学」―躁うつ病の人間的理解の試み―. 精神経誌, 109 (8); 725-729, 2007

21) 大前 晋: 躁うつ混合状態の意味―「易刺激性―敵意うつ病 (Benazzi, Akiskal) と「激越性うつ病」(Koukopoulos)―. 精神科治療学, 23 (7); 797-804, 2008

22) 大前 晋: 双極性障害および関連障害群 (診断概念の変遷―DSM-III導入前まで―). 双極性障害および関連障害群, 抑うつ障害群, 睡眠-覚醒障害群 (神庭重信総編集/編, 内山 真編, DSM-5を読み解く―伝統的精神病理, DSM-IV, ICD-10をふまえた新時代の精神科診断-3.). 中山書店, 東京, p.11-52, 2014

23) 大前 晋: カタトニー(緊張病)の診断学的格づけ―たたかえ!チーム・クレペリン―. 精神経誌, 120 (2); 114-122, 2018

24) 大前 晋: 精神医学における診断妥当性―具体化・物象化の錯誤を超えて―. 精神科治療学, 35 (2); 133-140, 2020

25) Paris, J.: The Bipolar Spectrum: Diagnosis or Fad? Routledge, New York, 2012

26) Scadding, J. G.: Essentialism and nominalism in medicine: logic of diagnosis in disease terminology. Lancet, 348 (9027); 594-596, 1996
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27) 柴田收一: 躁欝病と渇酒症および遁走. 精神経誌, 60 (8); 809-841, 1958

28) Shorter, E., Fink, M.: The Madness of Fear: A History of Catatonia. Oxford University Press, New York, 2018

29) 武島 稔, 岡 敬: DSM-5の混合性の特徴とBenazziの混合性うつ病―うつ状態における双極性障害と単極性うつ病の鑑別にはいずれが有効か?―. 精神経誌, 118 (9); 645-652, 2016

30) Weygandt, W.: Über die Mischzustände des manisch-depressiven Irreseins. Ein Beitrag zur klinischen Psychiatrie, Lehmann, München,, 1899

31) World Health Organization: ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics. (https://icd.who.int/dev11/l-m/en) (参照2022-07-14)

注釈

*1 激越性/激越型抑うつ,焦燥性/焦燥型抑うつは,すべてagitated depressionの邦訳である.したがって同義で相互交換可能である.ここでは,一般的に多い使用法にしたがって,抑うつ状態の類型としては激越性抑うつ,単独の症状としては焦燥と表現する.

*2 その少し前,1891年にドイツのフランクフルト・アム・マインで国際電気技術博覧会が催された19).そこで三相交流技術の送電に対する実用性が示された.三相交流波は図2のような図式である8).ドイツ近代化の象徴のひとつといえる出来事で,国民の士気も高揚したらしい.当時35歳の愛国者Kraepelinがこれを知らなかったとはいわせない.この図は混合状態の説明に応用できる.Kraepelinはそう考えたとおぼしい.

*3 この期間に日本では,柴田27),森山20),宮本18)がそれぞれの立場から,混合状態を手がかりに躁うつ病の精神病理全般を考察している.現代的視点から再評価されなければならない業績である.

*4 DSM-5の邦訳とICD-11の邦訳には微細だが不調和が存在する.DSM-5では「躁病/軽躁病エピソード」「抑うつエピソード」「混合性の特徴」である.DSM-IV-TRに掲載されていた「混合性エピソード」はDSM-5では消去された.ICD-11では「躁/軽躁エピソード」(「病」がない)「抑うつエピソード」(これのみDSM-5と共通)「混合エピソード」(「性」がない)である.DSM-5の「混合性の特徴」に相当する特定用語はICD-11にはない.

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