目的:benzodiazepine受容体作動薬(以下,BZDs薬)に関連する医学的問題として,3つの臨床類型が存在すると考えられる.臨床用量範囲内のBZDs薬の長期服用によって中止が困難な状態となる常用量依存,常習的に大量のBZDs薬を服用しコントロールを喪失した依存症,挿話的な過剰服薬などが問題となる有害使用である.本研究では,3類型の臨床的特徴を明らかにし,大量使用からの減量法について検討した.方法:2015年4月~2019年12月に国立精神・神経医療研究センター病院薬物依存症センターを初診したBZDs薬関連障害患者67名を対象とし,「常用量群」「依存症群」「有害使用群」の3類型に分類し,診療録から収集した臨床的情報(性別や年齢,就労状況,服用BZDs薬の種類・使用期間・使用量,併存精神障害,アルコール・薬物問題に関する重症度尺度得点,治療転帰など)に関して3群間で比較を行った.さらに,依存症群のうち,BZDs薬の減量もしくは中止を目的に入院治療を行った8名の患者に関して,入院時における服用BZDs薬のdiazepam換算量と置換や漸減のペースといった減量方法に着目し,経時的な推移を記述した.結果:常用量群(n=25)は,平均年齢が51.3歳と高く,使用年数が平均14.7年と長く,併存精神障害として神経症性障害をもつ者が多かった.依存症群(n=24)はdiazepam換算量の平均が82.8 mgと高く,入院治療を要した者が多かった.有害使用群(n=18)は女性や若い世代が多く,diazepam換算量の平均は22.4 mgであった.減量法についてはdiazepam換算量50 mgを超えれば入院加療を行う目安とし,長時間作用型のBZDs薬へと置換し,週に5~20%の減量を行い,diazepam換算量50 mgを目安に減量のペースを緩めた.結論:依存症群は,使用BZDs薬量が著しく多く,社会的な障害も大きくなり,入院治療を要する場合が多い.有害使用群は,日常に使用するBZDs薬の量は少ないが,挿話的な過剰服薬が引き起こす社会的障害は小さいとはいえない水準であった.本研究では,入院治療で長時間作用型BZDs薬への置換,ならびに,diazepam換算量50 mg/日を目安に減量ペースを緩めるという二段階の方法でBZDs薬の減量に成功していた.
ベンゾジアゼピン受容体作動薬関連障害の類型化と大量使用からの減量法の検討
1)北九州市立精神保健福祉センター
2)国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部
3)こころ診療所吉祥寺駅前
2)国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部
3)こころ診療所吉祥寺駅前
精神神経学雑誌
126:
510-520, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-083
受理日:2024年3月1日
https://doi.org/10.57369/pnj.24-083
受理日:2024年3月1日
<索引用語:ベンゾジアゼピン受容体作動薬, 減量法, 薬物依存症, 過剰服薬, 常用量依存>