Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第126巻第3号

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特集 摂食障害を外来で効果的に治療する
摂食障害の治療における外来治療の意義と当事者と共に実践する治療のあり方
西園マーハ 文
明治学院大学心理学部
精神神経学雑誌 126: 186-194, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-031

 摂食障害は有病率も死亡率も高い疾患であるが,外来での治療が充実しているとはいえず,経過観察中に体重が低下して入院となる場合も多い.入院となっても,体重増加だけを目標とした入院治療では再発も多い.外来での効果的治療や,入院と外来治療の連携が望まれるところである.摂食障害においても他の精神疾患同様,地域での治療が望ましく,そのためには外来治療が治療の中心となることが望まれる.外来治療においては,治療者が食事量や運動量をすべて管理することはできないため,当事者が積極的に治療にかかわる必要がある.摂食障害では病状を否認することも多いため,外来治療の充実のためには,当事者への心理教育,特に当事者が症状の外在化について知ることが重要である.これによって,当事者と治療者の協働作業が可能になる.また,本人が取り組むべき課題を明確にして,生活のなかで,ガイデッドセルフヘルプの考え方で治療を行うのが望ましい.治療では,過活動の制限も必要となるが,これは単なるエネルギー消費の制限というだけでなく,その結果生じる心理的問題への気づきが重要である.また,過活動の制限を本人が納得するためには,見通しをもった治療計画と信頼関係の確立が必要である.従来,摂食障害の治療は,低体重や過食嘔吐などの症状改善に焦点があてられてきたが,本人の回復のためには,社会参加への支援も重要である.特に,就労については,他の疾患に比べて支援のシステムが整っておらず,現状では個人の努力に任されている.摂食障害当事者の年齢が広がっている現在,就労も視野に入れたソーシャルスキルトレーニングなどが必要であろう.摂食障害であることを周囲に話したときの対応など,産業保健領域や社会に向けたさらなる啓発が必要である.これらの課題を意識し,早期の治療が始められれば,摂食障害は,精神科ジェネラリストにも十分治療できる疾患である.

索引用語:神経性やせ症, 神経性過食症, 外来治療, 過活動, ガイデッドセルフヘルプ>
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