Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第126巻第2号

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資料
新型コロナウイルス感染症流行下における精神科救急医療施設の対応状況―精神科救急入院料算定施設を対象とする調査―
花岡 晋平1)2), 中西 健太3), 畠山 洋輔2), 石川 敬子1), 阿部 貴之1), 深見 悟郎1), 林 偉明4), 平田 豊明1)5)
1)千葉県総合救急災害医療センター精神科(千葉県精神科医療センター)
2)東邦大学医学部社会医学講座
3)医療法人生生会松蔭病院
4)千葉県精神保健福祉センター
5)医療法人学而会木村病院
精神神経学雑誌 126: 97-105, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-018
受理日:2023年10月14日

 【背景と方法】日本の精神科救急医療は,精神科単科病院により大きな部分が担われてきた.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により,積年の課題である身体合併症への対応力不足が再び認識された.本研究では,精神科救急医療の事業継続に資するため,2021年10月に精神科救急入院料算定施設(全179施設)を対象に,医療設備やCOVID-19陽性患者対応に関して調査を行った.【結果】調査票回収率は61.5%(110/179)であった.調査対象施設のうち精神科単科病院が88.2%(97/110),平常時に身体合併症を受入れない施設が46.4%(51/110)を占め,COVID-19対応に有用なポータブル・レントゲン装置をもつ施設は61.8%(68/110),同じく血液ガス検査装置をもつ施設も61.8%(68/110)であった.陽性患者受入れを原則可とした施設は31.8%(35/110)であり,うち実際に入院実績がある施設は,20.9%(23/110)であった.一方,陽性者の入院が原則不可である15施設でも入院実績が確認された.調査対象施設の多くが,病棟閉鎖や外来閉鎖,デイケア閉鎖,職員と患者の陽性者発生を経験した一方,2018年度と比較して2020年度の入院件数およびのべ外来件数はそれぞれ-5.9%および-5.5%の減少であった.【考察】調査結果から,精神科救急医療におけるCOVID-19を含む身体合併症への対応力には課題があり,必要な医療設備や人材が不足している状況が明らかになった.また,COVID-19陽性患者受入れの可否についても,施設によって差があり,実際に入院実績がある施設は少数であった.引き続き,地域の実情にあわせながら新興感染症を含む身体合併症に対応可能なように,身体科救急医療施設との協同体制の強化など,精神科救急医療システム全体の事業継続性を確保することが求められる.

索引用語:精神科救急入院料算定病棟, 精神科救急, COVID-19>
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