Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第126巻第2号

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特集 抗体介在性自己免疫性脳炎と精神医学
自己抗体介在性の精神疾患研究の歩み―自己免疫性脳炎から自己免疫性精神病―
千葉 悠平1)2), 阿部 紀絵2), 服部 早紀2), 伊倉 崇浩2), 斎藤 知之2)3), 勝瀬 大海2), 須田 顕2), 藤城 弘樹4), 高橋 幸利5), 西野 精治6), 菱本 明豊2)
1)積愛会横浜舞岡病院
2)横浜市立大学医学部精神医学教室
3)誠心会よりどころメンタルクリニック横浜西口
4)名古屋大学精神医学教室
5)国立静岡神経てんかん医療センター
6)スタンフォード大学医学部精神医学
精神神経学雑誌 126: 126-133, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-021

 脳炎患者が病初期に精神病症状を呈することは比較的よく知られている.特に,2007年にDalmau, J.らによって発表された抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体抗体脳炎(抗NMDAR脳炎)は,精神症状を呈することが多いため,精神科臨床において自己免疫性脳炎を鑑別する重要性は周知されてきている.一方で,免疫系の異常と,精神疾患との関連についての知見も蓄積しつつあり,一部の精神科患者は,その病態に免疫学的機序が関連すると考えられるようになってきている.2020年に世界精神医学会の分科会であるPsychoimmunology Expert Meetingが,「自己免疫性精神病」の診断基準を提唱した.自己免疫性精神病の診断基準および自己免疫性脳炎のRed flagsを評価することで,今後は,primaryな精神疾患を免疫学の視点で評価し直し,適切な治療の確立への取り組みが期待されている.本稿では,まず,免疫系と神経系の関係,免疫異常と精神疾患の関係,自己免疫性脳炎の病態と自己免疫性精神病の診断基準を概説する.次に,われわれがこれまで経験した実際の症例の提示を行い,臨床上の診断,治療,経過観察のポイントについて考察する.また,代表的な自己免疫疾患である,自己免疫性甲状腺疾患や全身性エリテマトーデス患者における取り組みについて報告する.自己抗体を始め免疫系と神経系の理解が深まることで,精神疾患を生物学的に捉え直し,治療につなげることができる可能性がある.今後も継続した症例の蓄積と病態の解明が必要である.

索引用語:抗NMDAR脳炎, 自己免疫性精神病, 橋本脳症, 全身性エリテマトーデス, 脳器質性精神疾患>
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