Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第126巻第2号

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特集 抗体介在性自己免疫性脳炎と精神医学
認知症・てんかんを主徴とする自己免疫性脳炎―抗体診断と意義―
田中 惠子1)2)
1)新潟大学脳研究所モデル動物開発分野
2)福島県立医科大学多発性硬化症治療学講座
精神神経学雑誌 126: 106-113, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-019

 自己免疫性脳炎は,急性・亜急性に気分障害や妄想などの精神症状,記憶障害,けいれんなどで発症し,診断に有用な病型関連自己抗体が検出される.このなかで,抗NMDAR脳炎は,若年女性に好発し,顕著な精神症状で発症した後,けいれん・意識障害などが加わる定型的な経過を辿る一群である.近年,新たな自己抗体が相次いで見出され,自己免疫性脳炎の臨床スペクトラムは拡大を続けている.緩徐な経過で一部の症候のみを呈する例の報告が増加しており,認知症,てんかん,運動異常症,パーキンソニズム,小脳変性症などの診断がなされて免疫療法による症状改善の機会を逃してしまう例もある.特に,抗NMDAR抗体に次いで検出される頻度が高い抗LGI1抗体陽性例では,やや緩徐に進行する認知機能低下とけいれん発作の出没が特徴とされ,記銘障害が遷延する場合が多い.早期治療のためには,抗体診断が有用であり,検出頻度が高い抗体については商業的に検査会社が受託を始めている.しかしながら,いまだ少数の抗体種のスクリーニングにとどまっており,新たに見出された抗体の検出には各研究機関への直接の依頼が必要であるなど,煩雑な状況が続いている.さらに,単一の検出法では偽陽性・偽陰性の頻度が高いことも報告されている.また,検体の採取時期,血清か髄液かなど,適切な検体の採取・保存も重要である.非典型的な症候を呈する自己免疫性脳炎では,免疫治療の機会を逃さないことを念頭に,抗体検査の結果のみではなく,臨床的特徴や検査所見を総合的に考慮して慎重に判断することが重要である.

索引用語:自己免疫性脳炎, 自己抗体, 認知症, てんかん, 神経変性疾患>
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