Advertisement第121回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第126巻第10号

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討論
生物学的基盤を有する重篤だが回復可能な精神疾患としての摂食障害(摂食症),神経性やせ症
永田 利彦1), 西園マーハ 文2), 中里 道子3), 中尾 智博4), 三井 信幸5), 山田 恒6), 竹林 淳和7), 水野 雅文8)
1)壱燈会なんば・ながたメンタルクリニック
2)明治学院大学心理学部
3)国際医療福祉大学医学部精神医学
4)九州大学大学院医学研究院精神病態医学
5)北海道大学大学院医学研究院神経病態学分野精神医学教室
6)兵庫医科大学精神科神経科学講座
7)浜松医科大学精神医学講座
8)東京都立松沢病院
精神神経学雑誌 126: 655-663, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-106
受理日:2024年5月8日

 摂食障害(摂食症),特に神経性やせ症は慢性化しやすく,追跡期間10年以上の研究をまとめると平均73.2%が寛解,8.5%が改善していた一方で,13.7%が慢性化し,9.4%が死亡していた.神経性やせ症の標準化死亡比は代表的な精神疾患より高い.慢性化した結果,重症遷延性神経性やせ症(SE-AN)となり,特定機能病院の精神科に対して入院治療要請がなされて,困難な状況に直面することも多い.その現実的な解決は,身体的合併症の治療的負担から忌避するのではなく,反対に早期発見,早期介入から慢性期までのすべての局面における精神科的治療に積極的に取り組むことである.現在の入院中心,身体面中心の治療には限界があり,地域包括,長期的視点からの治療が求められている.また,早期であっても,すでに先行する神経発達症,不安症,パーソナリティ症などの併存症を有している場合,予後不良となる可能性があるが,それらの併存症は現在,精神科医が主となって治療に取り組んでいる疾患ばかりである.そこで,まず,神経性やせ症は精神疾患のなかで最も顕著な脳のボリューム低下,精神のみならず体重のコントロールの困難さという素因の関与など,従来の精神疾患と同様の文脈で理解できる生物学的基盤を有していることを認識することである.そして,支持的精神療法をはじめとする,一般的な治療として定着している精神科医療を最大限動員することで,十分に回復させることが可能であり,精神科医が率先して取り組むべきである.

索引用語:神経性やせ症, 摂食障害(摂食症), 重症遷延性神経性やせ症, 支持的精神療法>
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