Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第9号

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精神医療奨励賞受賞講演
第118回日本精神神経学会学術総会
精神科治療ガイドラインの普及・教育・検証活動―EGUIDEプロジェクト―
橋本 亮太, EGUIDEプロジェクトメンバーズ
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神疾患病態研究部
精神神経学雑誌 125: 799-807, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-113

 精神科医療においては,薬物療法と心理社会的療法がその両輪であるが,その実践については臨床家ごとのばらつきが大きく,標準的な医療を普及させることが必要とされている.そこで,精神科治療ガイドラインの普及・教育・検証活動を目的としたEGUIDEプロジェクトが発足した.EGUIDEプロジェクトでは,精神科医療の実態を明らかにする調査を行い,それを均てん化するための統合失調症およびうつ病のガイドライン講習を141回行い,延べ約3,500名が受講した.それぞれのガイドラインの講習をたった1日受けることにより,医師と患者が話し合って治療の方針を決定する共同意思決定(SDM)の理解が深まり,ガイドラインの理解度が顕著に向上することを示した.さらに,そのガイドラインの実践度が講習前と比較して講習後の数年にわたって持続的に向上していることを示した.精神科医療の実態調査において,ガイドラインが十分に普及しておらず,例えば統合失調症において抗精神病薬単剤治療が推奨されているが,日本における退院時の単剤率は57%であり,しかも,病院ごとのばらつきが大きく,0~100%であることが見いだされた.この診療実態に対して,講習を受講した医師が主治医の患者では受講していない医師が主治医の患者より,統合失調症で推奨される抗精神病薬単剤治療率やうつ病で推奨される抗うつ薬単剤治療率などがより高いことが示され,ガイドラインの講習の効果が立証された.全国規模でこのような講習を行っていくことが,今後の精神科医療水準の均てん化につながると考えられる.このような活動をする仲間が全国から集い,精神医学・医療に対する理念を共有し切磋琢磨することにより,次の世代にわたって普及・教育が継続していくことが期待される.

索引用語:EGUIDEプロジェクト, 統合失調症薬物治療ガイドライン, うつ病治療ガイドライン, 均てん化, 診療の質指標>
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