Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第9号

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特集 曲がり角に立つ精神科入院医療―マクロ状況と精神科臨床から―
臨床現場からの改革は可能か―Micro総合病院の必要性―
森 隆夫
あいせい紀年病院
精神神経学雑誌 125: 794-798, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-112

 少子高齢化の波は精神科病院にも及んでいる.近年では,新規入院患者の90%近くが1年以内に退院できるようになっており,精神科病院の実働する病床の空室率は上昇を続けている.一方で,精神科病院に残っている長期入院患者は,身体合併症を発症していることが多く,多くの精神科病院は,身体合併症の対応に苦慮している.このような状況に鑑み,あいせい紀年病院では,手術室を備えた整形外科,理学療法室を備えたリハビリテーション科,内科,口腔衛生や嚥下障害にも対応できる歯科を次々と併設していった.そのため,現在当院に紹介されている入院患者は,身体合併症のある患者が多くなっており,それゆえにさまざまな問題点がみえてきている.さらに2021年秋には内科医が精神科病院である当院の院長に抜擢された.ここ数年来は,「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」に関する議論が盛んに行われている.確かに入院期間は短くなっているが,約3分の1が退院後1年以内に再入院している.この一因には身体合併症の問題がある.精神疾患を抱える患者が地域で生活していくためには,精神科を併設した総合病院や当院のような合併症を治療できる精神科病院が必要だと思われる.当院のようなmicro総合病院は,障害とともに生きる患者にとって,安心して気軽に身体の悩みが相談でき,検査や治療,必要に応じて簡単な手術や身体のリハビリテーションを受けることができる.しかしながら,さまざまな診療報酬上の問題を解決する必要があるだろう.今後,精神科病院は機能分化していく.そのような機能分化した精神科病院と,当院のような精神科をベースにしたmicro総合病院とが連携することによって,障害とともに生きる患者の「心とからだの問題」を地域で適切に診切ることができるようになれば,「精神障害にも対応した地域包括ケア」にも益する強力な精神科医療のシステム構築になるのではないかと考えている.

索引用語:micro総合病院, 身体合併症, 診療報酬, 地域包括ケア>
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