Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第9号

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特集 曲がり角に立つ精神科入院医療―マクロ状況と精神科臨床から―
統計からみた精神科入院医療の変化
竹島 正1)2), 河野 稔明1), 臼田 謙太郎3), 奥村 泰之4), 福田 正人5), 吉田 光爾6), 立森 久照3)7)
1)川崎市総合リハビリテーション推進センター
2)大正大学
3)国立精神・神経医療研究センター
4)一般社団法人臨床疫学研究推進機構
5)群馬大学
6)東洋大学
7)慶應義塾大学医学部
精神神経学雑誌 125: 762-770, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-108

 【目的】精神保健福祉資料(630調査)の長期データや入院患者数の将来推計をもとに,わが国の精神科入院医療に起こっている変化を概観することを目的とした.【方法】630調査長期データをもとに,全国の在院患者数,在院期間別患者数,年齢階級別患者数,診断別患者数の推移を調べた.また6月1ヵ月間の新入院患者について2004年6月,2010年6月,2015年6月の3時点で年齢階級別および診断別の割合を調べた.さらに厚生労働省の研究事業の成果をもとにした都道府県別のF0およびF2の在院患者数の推移と,患者調査,630調査,レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)による将来患者数の推計を加えて,精神科入院医療に起こっている変化について考察した.【結果および考察】630調査による最近20年の全国の動向からは,在院期間別では「1年未満」の患者数はほとんど変化がないものの,「1年以上5年未満」は緩やかな減少,「5年以上」は大きく減少していた.年齢階級別では特に「20歳以上40歳未満」と「40歳以上65歳未満」の患者数が大きく減少し,「75歳以上」の入院患者数が増加していた.新入院患者についても「75歳以上」の割合が増加していた.このような変化は,人口減少と高齢化の進展,精神疾患の病状の変化,精神科医療の進歩,国民意識の変化などを背景にした地域の精神科医療ニーズの変化によるものと考えられる.このような変化は,都市部においては必要とされる精神科医療の内容に,地方においてはさらに精神科医療の確保にも影響していくと考えられる.【結論】精神病床の入院患者数の減少は,精神科入院医療のあり方や地域の精神科医療体制にも大きく影響する可能性がある.地域に応じた精神科医療の確保に取り組む必要がある.

索引用語:精神保健福祉資料(630調査), 患者調査, NDB, 入院患者数, 将来推計>
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