Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第8号

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連載 21世紀の「精神医学の基本問題」 ― 精神医学古典シリーズ
Eugen Bleuler―統合失調症(スキゾフレニア)概念の創始者―
人見 一彦
近畿大学名誉教授
精神神経学雑誌 125: 709-719, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-100

 Bleuler, E. はスイス生まれの精神科医である.彼はチューリッヒ大学附属精神科病院ブルクヘルツリ第5代主任教授としてKraepelin, E. の早発性痴呆に代えて,新たに「スキゾフレニア」という概念を提唱した.この概念は最初1908年に発表され,1911年の『早発性痴呆または精神分裂病群』により世界的に知られることとなった.彼はさまざまな精神機能のスプリッティングがこの疾患の顕著な特徴であり,このような心理学的立場からの研究が新しい光明をもたらすであろうと考えた.この背景にはFreud, S. の精神分析が大きな影響を与えている.Jung, C. G. の役割も大きい.スキゾフレニアの基本症状としては連想の障害,情動性の障害,自閉に加えて,両価性を取りあげ,幻覚,妄想などは副次的症状とした.これらの基本症状はのちの精神科医たちにより「Bleulerの4 A」と呼ばれている.Bleulerが精神分析的認識でもってこの疾患の探求に向かった背景には,スイスの民主的政治風土を挙げなければならない.当時のドイツ精神医学が激しい非難を繰り返したFreudの思想を擁護することにより,ブルクヘルツリは精神分析を導入し,臨床的に評価した世界で最初の大学精神科病院となった.Bleulerの代表的著作をはじめ,生い立ち,経歴,家族関係,精神病を病む姉Annaの存在,Nijinsky夫妻の診察風景について紹介し,最後にBleulerの長男でもありブルクヘルツリ第7代主任教授となったManfred Bleulerの業績にふれる.新型コロナウイルスのパンデミックに右往左往する今日の医療事情を考えるとき,『医学における自閉的―無規律的思考とその克服』は大きな示唆を与える.

索引用語:オイゲン・ブロイラー, 統合失調症, 理論, 個人史, ブルクヘルツリ>
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