Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第8号

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特集 精神障がい者の就労支援はどうあるべきか―IPS個別就労支援からの学び―
Individual Placement and Support(IPS)―その開発と導入の経緯―
林 輝男
社会医療法人清和会西川病院
精神神経学雑誌 125: 670-676, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-095

 個別職業紹介とサポート(Individual Placement and Support:IPS)は,本邦の主流であるtrain-place(train=訓練,place=就職)model就労支援に対して,米国で1990年代以降開発された重度精神障害者を対象にしたplace-train model就労支援である.Place-train model就労支援では,就労前訓練を必須とせず,一般企業での就労を早期にめざし,実際の職場で働くことをもって訓練とし,就職後も個別に利用者と雇用主に支援を提供する.IPSは,従来型の就労支援と比べ,約2.5倍,利用者の50~60%の一般企業への就労を可能にする.1980年代末まで,米国においても重度精神障害者に提供される就労支援は,主としてsheltered workshops(作業所)などのtrain-place modelの保護的就労であった.その後,障害者雇用や,税制上の優遇制度などが導入されたが,保障に依存する者を増やすリスクも指摘され,一般企業への就職と定着を目的とする援助付き雇用といわれる支援が推奨されるようになった.同時期,ソーシャルワークから勃興したリカバリー理論やストレングスモデルが普及し,当事者の好みやストレングスを尊重しながらも,エビデンスに基づいた援助付き雇用として開発されたのがIPSである.したがって,IPSでは利用者-支援者の関係性は,インフォームドコンセントより共同意思決定(shared decision making:SDM)が重視される.先進国で制度化が進むなか,本邦ではまだIPSは制度化されていないが,現代社会において,地域との共生,スティグマの解消,多様な労働機会の提供を実現しようとする流れのなか,本邦でIPSが求められ,普及することは必然と考えられる.

索引用語:IPS, 普及, 障害者の就労支援, リカバリー理論, SDM>
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