Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第8号

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総説
統合失調症の長期予後
池淵 恵美
帝京平成大学大学院臨床心理学研究科
精神神経学雑誌 125: 657-669, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-094
受理日:2023年2月20日

 統合失調症の発症からの回復率は,早期からの介入と薬物療法,心理社会的治療による包括的な支援によって向上する.再発しやすい時期から安定した社会参加へと向かう時期は,持効性注射薬など維持療法の工夫,再発防止プログラムなどが役立つ.精神症状,社会機能,対人機能はそれぞれ相対的に独立した機能であり,それぞれへの支援が必要である.20年以上の長期予後は,一定の割合でよい社会参加を示す人が存在するが,その割合は薬物療法導入以前からのほぼ1世紀の間に大きくは変わっていない.一方,いわゆる荒廃状態は減っていると思われる.予後のリスク因子は多く,一つ一つのエフェクトサイズが小さく,幼時の逆境体験など介入が難しいものも多い.現在の治療では疾患そのものの経過を修飾することが難しく,発症前からの低い社会機能などの困難を抱えた人たちに対して,有効な支援ができていない.また生命寿命の短さも課題となっている.薬物療法の短期~中期の再発防止効果は明確であるが,長期予後への影響は明確になっていない.薬物療法中止のガイドラインが必要である.長期予後改善に向けて,ハイリスク状態の人への介入,初発から社会機能や自己価値観の回復をめざす包括的な支援を継続できるシステムや治療観,障害をもつ人への合理的配慮を行う社会モデルの普及,改善の困難な諸症状への挑戦,当事者の価値観に焦点をあてた介入方法の発展を,若い研究者に期待したい.

索引用語:統合失調症, 長期予後, 寛解, リカバリー, 社会モデル>
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