Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第7号

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特集 いま周産期メンタルヘルスで注目されていることを考える
国内における男女の周産期うつ病の有病割合―国内初のメタアナリシスの結果から―
徳満 敬大1)2), 菅原 典夫2), 鈴木 利人3), 古郡 規雄2), 下田 和孝2)
1)十和田市立中央病院メンタルヘルス科
2)獨協医科大学精神神経医学講座
3)順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院メンタルクリニック
精神神経学雑誌 125: 613-622, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-087

 周産期うつ病は,女性の妊娠中から産後1年間に生じる精神疾患である.妊産婦の健康問題や,乳幼児の不適切な養育につながる可能性があるため,母子保健の枠組みで重点課題として取り組みが行われている.一方,近年は男性も周産期に高率にうつ状態を呈することが明らかとなってきた.しかし,周産期に精神的不調を抱えている男性に対する支援体制は十分ではなく,わが国における男女の周産期うつ病に関する有病割合と性差に関する理解も不十分であった.このため,われわれは日本人男女における周産期うつ病の有病割合のメタアナリシスを行った.はじめに,PubMedおよびICHUSHIのデータベースを検索し,日本人女性の周産期うつ病について国内外の論文1,317報の抄録をレビューし,301報を精査し,123報の研究を解析した.その結果,女性の周産期うつ病の有病割合は11.5~15.1%と高く,産後1ヵ月時点では14.3%であることが明らかとなった.他方,男性の周産期うつ病も高い割合で生じていることが判明した.日本人男性の周産期うつ病について,国内外の論文1,379報の抄録をレビューし,33報を精査し,15報の研究を解析対象とした.その結果,男性の周産期うつ病の有病割合は8.2~13.2%であることが明らかとなった.加えて,産後は男女の比較で相対危険度に統計的有意差がみられないほど,男性の産後うつ病の有病割合が高いこともわかった.先行研究において,女性だけでなく,男性も周産期うつ病により自殺リスクが高まると報告されている.また,父親と母親の周産期うつ病発症は,互いに相関していることも知られている.このため,周産期において,女性だけでなく男性の精神状態も評価し,適切な援助体制を構築することが必要であると考えられた.夫婦の自殺防止と子どもの健康な発達を促進するためには,家族単位の視点で心理的サポートを実践することが重要であろう.

索引用語:周産期うつ病, 有病割合, メタアナリシス, 男性, 女性>
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