Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第7号

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特集 いま周産期メンタルヘルスで注目されていることを考える
周産期メンタルヘルスコンセンサスガイドの活用事例―精神科診療における多職種連携・情報共有を中心に―
渡邉 博幸1)2)
1)医療法人学而会木村病院
2)千葉大学社会精神保健教育研究センター
精神神経学雑誌 125: 607-612, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-086

 『周産期メンタルヘルスコンセンサスガイド2017』は,20の臨床疑問についての推奨と解説文からなる.本ガイドは,単に支援の指針や方法を述べているだけではなく,支援提供の前提となる組織構成や連携といった支援構造のあり方も示している.例えば,CQ5では,受け皿となる精神科病院の役割,外来診療と入院への対応について言及している.また,CQ6では,虐待が疑われた場合の連携は,個人ではなく,院内の虐待防止委員会などの組織で対応することが望ましいと述べている.このようなガイドの理念や指針を活用するにあたり,医療法人学而会木村病院は,軽症から重症までの産後メンタルヘルスケア連携の受け皿となっている.軽症ケースに対しては,自治体保健師への専門的助言を行い,中等症に対しては,2017年7月に女性のこころ専門外来やストレスケア病棟を開設し,速やかに医療を提供できる体制をつくった.さらに,産科的合併症がないという限定ではあるが,精神科救急入院で重症ケースを引き受けている.専門外来を開いてから,開設5年間の2022年6月末までで,のべ338名の対象患者の治療にあたった.産後女性の精神科治療を円滑に行うためには,(i)母子保健の地域資源やネットワークに精通した専任ワーカーを含む医師,心理士などからなる専任の医療チーム設置,(ii)保育や託児ができるスタッフの雇用,(iii)施設環境(専用待合室・診察室・授乳室など)の整備,(iv)児童相談所との密な連携を行う「家族支援チーム(FAST)」,(v)母子保健側との普段からの研修・研鑽・情報共有の場の構築などが必要となる.

索引用語:妊産婦のメンタルヘルス支援, 周産期メンタルヘルスコンセンサスガイド2017, 多職種連携, 家族支援チーム(FAST)>
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