Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第7号

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特集 いま周産期メンタルヘルスで注目されていることを考える
総合病院でできる多職種連携―産婦人科医の視点から―
辻 俊一郎
滋賀医科大学産科学婦人科学講座
精神神経学雑誌 125: 594-600, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-084

 産後うつ病などに代表される妊産婦メンタルヘルスケアは産婦人科医にとって注目される分野となり,『産婦人科診療ガイドライン』にも産褥精神障害,妊娠中のスクリーニングについて言及されるようになってきた.そこで,これらの指針がどれだけ浸透しているのか2020年に近畿産科婦人科学会周産期研究部会において実態調査を行った.その結果,妊産婦メンタルヘルスのスクリーニング実施率は100%であったが,「精神科受診への勧奨が難しい」などの理由で精神科紹介にストレスを感じていると回答した産科施設が4割程度あることが明らかとなった.当院では,多職種連携としてリエゾン精神看護専門看護師(リエゾンNs.)が中心となって活動するリエゾン精神科チーム(母性看護専門看護師,薬剤師,ソーシャルワーカー,患者支援センター入退院調整看護師が参加)が2015年より発足した.そこで精神疾患合併妊娠に対する介入効果を後方視的に検討すると,介入により精神科の初回受診の妊娠週数が有意に遅くなり(導入前16週,導入後25週,P=0.004),地域連携率は有意に増加する(導入前62%,導入後80%,P=0.003)ことが明らかとなった.リエゾンNs. が産科ユニットで面談を行うことで精神科受診勧奨もスムーズに行え,産科医の負担軽減につながることが期待できた.また精神科初診前に診療に必要な情報が診療録に記載されていることで精神科医の負担軽減にも寄与していると考えられた.しかし,地域の産科医から「なぜ精神科医を受診させないのか.看護師との面談だけならこちらでも管理ができる」と苦言を呈される症例も経験し,多種職連携の活動を発信する必要性も感じている.

索引用語:多職種連携, 妊産婦メンタルヘルス, リエゾン精神看護専門看護師>
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