Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第7号

※会員以外の方で全文の閲覧をご希望される場合は、「電子書籍」にてご購入いただけます。
討論
論文の著者になる資格があるのは誰か?―責任あるオーサーシップを促進するために―
田口 寿子
神奈川県立精神医療センター
精神神経学雑誌 125: 579-586, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-082
受理日:2023年2月8日

 論文の著者リストに名前を掲載することをオーサーシップという.オーサーシップは研究への貢献を認めるクレジットであると同時に,研究に対する責任を伴うものである.著者となる資格や求められる貢献内容を示した国際基準が存在するものの,その基準を満たさない者が著者とされたり,基準を満たす者が著者とされなかったりする不適切なオーサーシップ,特に実質的に研究に貢献していない所属長や高名な研究者を著者リストに加えるhonorary authorshipは著名な国際医学誌においても高率に認められている.不適切なオーサーシップには厳しい研究費の獲得競争や研究者間のヒエラルキーという構造的な要因があるため,なかなか減らないのが現状である.しかし他の研究不正行為と同様,不適切なオーサーシップは研究の公正性を侵害し,当該研究者の信用だけでなくその研究領域や医学研究そのものに対する社会の信頼を損ねたり,若手研究者に対するアカデミック・ハラスメントの手段になったりするなどさまざまな倫理的問題をはらんでおり,有害な結果をもたらすことがある.責任あるオーサーシップを促進するためには,医学生や研究者に対する教育による意識の向上を図る,研究機関でオーサーシップに関する取り組みを進め健全な研究文化を育成する,学術誌がオーサーシップに関する規程を明確に提示するといった対策を講じることが求められる.

索引用語:オーサーシップ, 研究の公正性, 不適切なオーサーシップ, 責任あるオーサーシップ, 出版倫理>
Advertisement

ページの先頭へ

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology