Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第7号

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総説
精神神経医療におけるDisease-Modifying Therapy―現在地と可能性を探る―
曾根 大地1), 森本 悟2), 中島 振一郎3), 品川 俊一郎1)
1)東京慈恵会医科大学精神医学講座
2)慶應義塾大学医学部生理学教室
3)慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室
精神神経学雑誌 125: 569-578, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-081
受理日:2023年2月20日

 近年の中枢神経医療の領域において,疾病の根本的な原因にアプローチする疾患修飾治療(DMT)への機運が高まっている.てんかん分野では,従来の薬物療法による発作抑制効果の限界から,抗てんかん原性(anti-epileptogenesis)をめざしたDMTの流れがみられ,結節性硬化症や外傷後てんかん,脳卒中後てんかんなどにおいて,てんかんの発症や進行を予防・修正する取り組みが試みられている.認知症領域では,長年にわたる挑戦と失敗の歴史を経て,近年はaducanumabやlecanemabの報告がアルツハイマー病のDMTに大きな進展をもたらすことが期待されている.多発性硬化症では,インターフェロンβに加えて抗体医薬を含むさまざまなリンパ球標的薬の登場により,目覚ましい治療の進歩を遂げている.パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症といった神経変性疾患においても,iPS細胞などの進歩によりDMTが将来的に可能になるかもしれない.狭義の精神疾患では,まずは修正すべき病態生理の解明が先決であるが,治療抵抗性統合失調症におけるグルタミン酸仮説と1H-MRSの知見はその契機となるかもしれない.こういった機運と取り組みは,従来の症状緩和や対症療法の枠を超え,将来的には精神・神経疾患の根治につながる可能性がある.本稿では,第118回日本精神神経学会学術総会で行われたシンポジウムをもとに,精神神経医療におけるDMTの現在地と可能性について議論する.

索引用語:疾患修飾治療, 精神神経医学, 神経変性疾患, てんかん, 認知症>
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