本調査は川崎市において自殺未遂患者などを救急医療機関退院後に地域支援につなぎ,退院後のQOLの向上と再企図の防止を図る支援モデルの構築の検討を行うことを目的とした.対象者は,川崎市中部(中原区・高津区・宮前区)に住所地を有する自殺未遂患者などのうち,本調査への参加に同意した者である.帝京大学医学部附属溝口病院,日本医科大学武蔵小杉病院(日医武蔵小杉病院),川崎市精神保健福祉センター,井田障害者センター,川崎市中部3区の区役所地域みまもり支援センター(保健福祉センター)による「川崎市中部ケアチーム」を組織し,初回面接以後の6ヵ月間,原則として1ヵ月ごとにフォローアップ面接を実施した.調査期間は2018年9月から2020年9月までであった.本調査は帝京大学医学部および日医武蔵小杉病院の倫理委員会の承認を得て実施した.「川崎市中部ケアチーム」への紹介に同意した20人のうち,初回面接に至ったのは10人(50.0%)で,そのうち8人が6回の面接を終了した.健康関連QOL(SF-36)の「身体的健康度」「精神的健康度」「役割社会的」のサマリースコアは6ヵ月後の時点でいずれも改善傾向を認めた.8人のうち3人はフォローアップ面接期間中に再企図があり,1人はフォローアップ面接期間終了後に再企図があった.フォローアップ面接期間中に再企図した3人はすべて面接で再企図を打ち明けた.初回面接に至らなかった10人(50.0%)は,他院転院3人,施設入所1人,連絡取れず4人,家族の拒否1人,同意撤回1人であった.6回のフォローアップ面接を完了しなかった者があったこと,同意があり「川崎市中部ケアチーム」に紹介があったものの初回面接に至らなかった者があったことから,毎月1回の面接によるフォローアップ以外の,対象者にとってより負担感の小さいフォローアップを取り入れることも必要と考えられた.本調査の成果を踏まえて,選択的予防介入の視点も含めて,自殺未遂者支援を発展させていく必要があると考えられた.
川崎市自殺未遂者支援地域連携モデルの実現可能性に関する調査
1)川崎市総合リハビリテーション推進センター
2)日本医科大学武蔵小杉病院
3)埼玉医科大学医学部
4)日本うつ病センター
2)日本医科大学武蔵小杉病院
3)埼玉医科大学医学部
4)日本うつ病センター
精神神経学雑誌
125:
504-512, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-071
https://doi.org/10.57369/pnj.23-071
<索引用語:自殺未遂, 救急受診, 地域支援, 実現可能性調査>