Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第6号

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総説
ポリジェニックリスクスコア,海馬体積および認知機能に基づく統合失調症と双極性障害の鑑別手法の開発―統合失調症と双極性障害の鑑別―
大井 一高, 藤兼 大輔, 塩入 俊樹
岐阜大学大学院医学系研究科精神医学
精神神経学雑誌 125: 468-475, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-067
受理日:2022年12月27日

 統合失調症(SZ)と双極性障害(BD)は人口の1%程度が生涯に罹患する複雑で「ありふれた」精神疾患である.両疾患の病態には,共通する遺伝素因だけでなく疾患特異的な遺伝素因の関与が示唆されている.両疾患の臨床的・遺伝的異種性を軽減し,両疾患を鑑別するために有望な中間表現型としては,遺伝素因がかかわり,かつBDと比べてSZで特に強く障害されている海馬体積や認知機能が両疾患の鑑別に有用な中間表現型と考えている.著者らは,多数の遺伝子多型を用いて算出したSZやBDなどのポリジェニックリスクスコア(PRS),海馬体積および認知機能を用いて,機械学習によるSZとBDの鑑別手法の開発を目的とした研究を継続している.このSZとBDの鑑別手法の開発という目的を達成するために,まず,(i)SZ,BDにおける脳皮質下体積変化,(ii)SZ,BDと知的機能障害間の因果関係,(iii)BDからSZを区分できる遺伝因子と知的機能の関連,についての検討を行った.それぞれ,(i)海馬体積はSZとBDの両疾患で低下,扁桃体体積はSZでのみ低下,(ii)SZと知的機能障害間に双方向性の因果関係を認めたが,BDと知的機能障害間には因果関係を認めなかった,(iii)BDからSZを区分できる遺伝因子は知的機能と負の相関,という結果を得た.ここまでの結果から,SZとBDの鑑別には,脳皮質下構造としては海馬体積よりも扁桃体体積が有用であること,認知機能が因果関係や遺伝学的にも有用であることを示唆している.引き続き,PRS,扁桃体体積,認知機能を組み合わせ,機械学習を駆使することで,SZとBDの鑑別手法の開発を試みたい.

索引用語:統合失調症, 双極性障害, ポリジェニックリスクスコア, 皮質下体積, 認知機能>
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