Jaspers, K. の『精神病理学総論』は大著のうえに議論が錯綜している箇所があり,全体を見通すことが難しい.本稿では,Jaspersが『精神病理学総論』をどのような目的で執筆したか,全体の構成の意味などを,伝記や彼の哲学著作を参照して検討する.また,Jaspersの提唱した代表的な概念,了解と説明において誤解されていると考えられる点,特に「神経症=了解可能,精神病=了解不能」について著者の見解を述べた.今となっては時代的にそぐわない点がいくつかはあるが,症候学を十分に学ぶためには,Jaspersの『精神病理学総論』はいまだ価値ある著作である.
Karl Jaspers―共鳴する魂の人―
1)筑波大学医学医療系茨城県地域臨床教育センター精神科
2)茨城県立中央病院精神科
2)茨城県立中央病院精神科
精神神経学雑誌
125:
305-317, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-045
https://doi.org/10.57369/pnj.23-045
<索引用語:カール・ヤスパース, 精神病理学総論, 了解, 説明, 症候学>