Advertisement第119回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第4号

※会員以外の方で全文の閲覧をご希望される場合は、「電子書籍」にてご購入いただけます。
原著
10年間のコホート調査に基づく東日本大震災被災者における心理的苦痛の経年変化
臼倉 瞳1)2), 内海 裕介3), 瀬戸 萌3), 佐久間 篤3), 菅原 由美4), 國井 泰人5), 中谷 直樹6), 寳澤 篤6), 辻 一郎4), 富田 博秋2)5)
1)東北学院大学教養学部人間科学科
2)東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野
3)東北大学病院精神科
4)東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野
5)東北大学災害科学国際研究所災害精神医学分野
6)東北大学東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門
精神神経学雑誌 125: 266-274, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-039
受理日:2022年12月28日

 【目的】東日本大震災で被災した地域住民のメンタルヘルスに焦点をあてた大規模なコホート研究は複数あるものの,発災後長期にわたる経過の詳細を明らかにした研究は見あたらない.そこで,本研究では,東日本大震災の被災地域住民の心理的苦痛の変化パターンについて,10年間にわたって年次的に実施されたコホート調査のデータを用いて明らかにする.【方法】東日本大震災で被災した宮城県七ヶ浜町住民を対象とした「七ヶ浜健康増進プロジェクト」によるコホート調査のデータを用いた.2011年から2020年まで毎年実施された計10回の調査のうち,1次調査時点で20歳以上であり,1次調査を含み5回以上回答した1,083名を解析対象とした.心理的苦痛はK6により評価した.【結果】各年のK6得点を用いて混合軌跡モデリングを実施した結果,K6の変化パターンについて「レジリエント群」(n=275,25.4%),「症候閾値下群」(n=455,42.0%),「軽度群」(n=291,26.9%),「中等度以上群」(n=62,5.7%)の4群からなるモデルが採用された(BIC=-25,159.5,log Bayed factor=309.4).【考察】全体として,どの群においても徐々に心理的苦痛は減弱していく傾向がみられたものの,発災初期における心理的苦痛の程度が長期にわたって維持される傾向にあることが示唆された.したがって,発災初期の時点で顕著な心理的苦痛を呈する被災者に対して,重点的な支援を長期的にわたり継続する必要があると推察される.

索引用語:東日本大震災, 心理的苦痛, 混合軌跡モデリング, 災害精神医学, 七ヶ浜町>
Advertisement

ページの先頭へ

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology