Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第4号

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総説
地域共生社会のために精神医療ができること
藤井 千代
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所地域精神保健・法制度研究部
精神神経学雑誌 125: 258-265, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-038

 地域共生社会の理念とは,制度・分野の枠や,「支える側」 「支えられる側」という従来の関係を超えて,人と人,人と社会がつながり,一人ひとりが生きがいや役割をもち,助け合いながら暮らしていくことのできる地域や社会を創るという考え方である.現在わが国では,高齢化や人口減少が進み,地域や家庭,職場などにおける支え合いの基盤が脆弱になりつつあるといわれている.このため国の施策として地域共生社会を構築することが急務とされており,2021年4月から,『地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律』が施行されている.同時に,精神保健医療福祉領域では,「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築が進められようとしている.このシステムの支援対象は,精神障害の有無や程度にかかわらず地域住民全体である.システム構築にあたっては住民の生活や地域づくりの視点をもって推進することが重要とされており,この理念は地域共生社会にも通じるものである.地域共生社会を構築するうえで重要な施策の1つが「断らない相談支援」である.市町村が実施する相談支援業務においては,相談者の抱える問題が複雑で,しかもニーズが不明瞭な場合も少なくない.そのような相談者は多かれ少なかれメンタルヘルス上の課題を抱えていることが多く,精神医学的アセスメントや介入が求められる場面にしばしば遭遇する.メンタルヘルスの課題はすべての「困りごと」に共通する課題であり,精神医療の地域社会への貢献は地域共生社会構築への大きな力となると考えられる.

索引用語:地域共生社会, 地域包括ケアシステム, 地域精神保健, 精神医療>
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