近年,社会的問題となっている児童虐待に対して精神医学はどうとらえ対応してきたであろうか.1990年代にHerman, J. L. により複雑性PTSDの概念が提唱され,1990年代半ばに著書『心的外傷と回復』(中井訳)が日本に紹介された.さらにトラウマの研究者であったvan der Kolk, B. A. らがそれに協調し,同時期に行われたACE研究をもとに「発達性トラウマ障害」の概念も提唱されることとなった.その後,徐々にトラウマの理解が進んでいくなかで,2018年に改訂されたICD-11でようやくcomplex PTSDが採用されることになったこともあり,児童期に逆境体験に曝されてきた子どもや成人に対するトラウマ,アタッチメント(愛着)の理解や診断,治療の分野に大きな関心が集まっている.今後の精神医学が児童虐待に対応するためには,トラウマインフォームドケアをよく理解し啓発していくことと,要保護児童対策地域協議会に積極的に参加していくことが求められる.
児童相談所からみえる児童虐待と精神医学との関連
医療法人慶仁会天神病院
精神神経学雑誌
125:
103-115, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-015
https://doi.org/10.57369/pnj.23-015
<索引用語:児童虐待, 児童期の逆境体験, 発達性トラウマ障害, トラウマインフォームドケア, 地域連携>