Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第11号

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特集 コロナ禍の自殺の増加について
マスクとワクチン―自殺と報道の関係について―
太刀川 弘和
筑波大学医学医療系臨床医学域災害・地域精神医学
精神神経学雑誌 125: 974-981, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-138

 2020年のコロナ禍における自殺者数増加には,有名人の自殺報道が寄与していたことが推測されている.自殺報道と自殺者数増加に関するメカニズムの理解と対策については,近年日本でも少しずつ変化がみられているが,いまだ十分とはいえない.本稿では,コロナ禍の有名人の自殺と自殺者数増加の関連を検討したうえで,これまでの有名人の自殺とメディア報道の関係に関する研究知見を振り返り,考えられる対策を提案した.まず,2020年の有名人の自殺報道記事,インターネット上の報道記事件数,コメント,評価件数と月別自殺者数の時系列推移などを検証し,同年は有名人の自殺報道が特別に自殺者数に影響を与えたことを独自に推察した.次に,有名人の自殺報道で生じる自殺は,メディアの集団への影響としての群発自殺現象としてよりむしろ,個人によるメディア情報の社会的学習の結果としての自殺行動の模倣,自殺の伝染モデルでとらえるべきことを紹介した.伝染モデルからメディアの自殺予防対策を考察すれば,情報拡散力が強く孤立しやすいウイズコロナ社会では,ガイドラインに基づく適切な報道をマスク,個人が自殺リスクをもつとき,それをいかに乗り越えるかという自殺予防に関する正しい知識の学習をワクチンに喩えて両方の対策の推進を願う.さらに,臨床においては,軽度の自殺リスクがある患者に対してメディアの影響について問いかけや語らいが求められる.

索引用語:有名人の自殺, 自殺の伝染, メディア・ガイドライン, パパゲーノ効果>
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