Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第11号

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特集 コロナ禍の自殺の増加について
コロナ禍における日本の児童思春期の自殺について
桝屋 二郎
東京医科大学精神医学分野
精神神経学雑誌 125: 966-973, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-137

 2020年より顕在化したコロナ禍は見通しの立たないまま遷延し,社会やわれわれに大きな影響を与え続け,国連の予想通り,日本においても2020年の自殺者が大幅に増加した.児童思春期の子ども達の自殺も同様に増加したが,日本においてはコロナ禍前から,子どもの自殺は相対的に上昇し続けている.自殺の危険因子はこれまでにも指摘されてきたものがあるが,自殺者の背景には精神疾患が隠れていることが多数あり,児童思春期の自殺においても同様の指摘がなされている.自殺が生ずる理論的モデルは,自殺に至る心理的基盤として広く支持されているSchneidman, E. S.が提唱した心理的視野狭窄などの自殺者に共通する心理と,Joiner, T. E. Jr.らが提唱した「自殺の対人関係理論」であると思われるが,児童思春期の自殺においてもこの両者の視点は有効である.コロナ禍においては社会的弱者性の拡大がみられたが,児童思春期の子ども達も「子ども家庭の貧困格差拡大」「学習格差の増大」「ネットやゲームへの依存傾向増加」「小児期逆境体験の増大」「ソーシャルディスタンスや私語抑制による対人関係や所属感の稀薄化」などによって社会的弱者性が拡大し,自殺の危険因子の増大のなかで実際に自殺が増えていったと考えられる.児童思春期の子ども達の自殺を防ぐためにも,支援者の啓発やゲートキーパーの育成,多職種によりアセスメントと支援の提供が重要である.

索引用語:児童思春期, 子どもの自殺, コロナ禍>
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