Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第11号

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資料
精神科救急におけるクリニカルパスの実態調査―普及状況の報告と課題の検討―
松原 拓郎, 木﨑 祐哉, 長谷部 憲一
松原病院精神科
精神神経学雑誌 125: 944-950, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-134
受理日:2023年7月3日

 2014(平成26)年度の診療報酬改定において院内標準診療計画加算が新設されたことを機に,全国の精神科救急医療を行う医療機関でクリニカルパス(以下,パス)が導入されるようになったが,実態調査の報告はなされておらず,本邦精神科救急におけるパスの普及状況は明らかにされていない.また,2014年に日本クリニカルパス学会はパスの定義を示し,パスの定義を満たすためにはパスのなかで「アウトカム」と呼ばれる患者状態と診療行為の目標の設定,設定したアウトカムの達成と未達成の評価ならびに記録,「バリアンス分析」と呼ばれる標準からの偏位の分析の実施が必要とされた.しかし,本邦精神科救急で導入されているパスのなかで,これらの定義を満たすパスがどれだけあるかは明らかにされていない.これらの背景をもとに,本稿ではわれわれが精神科救急医療を行う病院に対して行ったアンケート調査の結果について報告を行う.調査の結果38.5%の病院から回答があった.回答した病院の49.3%がパスを導入していることが明らかとなった.しかし,パスを導入している病院のうち,アウトカムの設定をしていたのが61.8%,アウトカムの評価を実施していたのが44.1%,バリアンス分析をしていたのが26.5%しかなく,日本クリニカルパス学会が示す定義を満たすパスが十分に普及していない実態が明らかとなった.われわれはアウトカム設定・評価,バリアンス分析を包含するパスが普及しない主要な要因が2つあると考察した.1つ目はアウトカム設定・評価,バリアンス分析の入力だけでは看護記録に必要な看護師の観察内容と思考過程を表現することが困難であるなどの看護記録の困難性が存在することである.2つ目は精神科救急を行う病院で多く導入されている電子カルテシステムには,アウトカム評価,バリアンス分析を実施する機能が搭載されていない可能性が存在することである.今後,さまざまな課題を解決していく必要があると考えた.

索引用語:クリニカルパス, ケアマネジメント, 精神科救急, 電子カルテ, BOM>
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