Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第10号

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特集 救命救急センターに搬送される自殺企図者に対する精神科医の役割
自殺企図で救命救急センターに搬送される重症患者の臨床的特徴と対応
石井 貴男, 佐野 智章, 大江 開, 河西 千秋
札幌医科大学医学部神経精神医学講座
精神神経学雑誌 125: 876-882, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-124

 身体的に重症な状態で救急医療部門に搬入される自殺企図患者は,縊頸や高所墜落などの致死的な自殺企図手段を選択していることが多い.自殺のリスク因子は多数知られているが,最も強力な自殺リスク因子は,自殺未遂などの自損行為の既往であり,自殺企図を繰り返すごとに致死性の高い方法になるといわれている.そのため,自殺予防の観点からも,自殺未遂者に適切な介入を行うことの重要性を示す根拠にもなっている.著者らが所属する札幌医科大学附属病院は,北海道で唯一の高度救命救急センターを有している.搬入される自殺企図患者は,身体的に重症な患者が多く,自殺既遂が半数以上を占める.2016年度から2020年度までに搬入された自殺企図患者の特徴をみてみると,性別は既存の報告と同様に,自殺既遂の比率は男性のほうが高く,自殺未遂の比率は女性のほうが高い傾向がみられた.自殺企図の手段に関しては,男女とも縊頸が最多で,高所墜落が続いた.ほぼ全例で精神疾患の診断基準を満たし,男女ともICD-10の分類でF3(気分障害)が最多で全体の42%を占めていた.「自殺企図の再発防止に対する複合的ケース・マネージメントの効果―多施設共同による無作為化比較試験―」(ACTION-J研究)で開発された継続的なケース・マネージメント介入が,「自殺企図後の患者に対する継続的な指導の評価(救急患者精神科継続支援料)」として2016年に診療報酬化された.札幌医科大学附属病院神経精神科では,いち早くこの救急患者継続支援を臨床に導入した.2016年度から2020年度の5年間に58名の自殺企図患者に対して介入を行ったが,介入後6ヵ月の時点で自殺再企図はみられなかった.このように身体的に重症な自殺企図患者が多く搬入される当施設でも,ケース・マネージメント介入が実装可能であることが示された.今後も症例数を増やして検討を進めていきたい.

索引用語:自殺企図, 自殺再企図防止, 精神科救急, ケース・マネージメント介入>
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