救命救急医療の現場においては,自殺企図により受傷した患者が搬送されることが多く,その多くを過量服薬による急性薬物中毒の患者が占める.特に向精神薬の過量服薬による搬送例の占める割合が高い.急性薬物中毒の症例は,重篤な身体疾患症例に比べて,急性期の身体的治療後,比較的短期間の入院となる場合が多い.救命救急センターと精神科医療の連携を中心とするさまざまな自殺対策により自殺者数はここ数年減少傾向であったが,現在(2021年)においても,依然救命救急センターに搬送される急性薬物中毒患者の割合は高いため引き続き慎重に対策を立てていく必要がある.また,入院における身体的治療後の通院先をどうしていくかということも,患者の予後に大きく影響してくると思われる.特にかかりつけ医療機関として割合の高い精神科クリニックは,今後どのように連携をとるのかが課題となってくる.2020年度以降はCOVID-19の影響もあり,自殺者の増加,特に若年者の割合の増加が懸念される事態となった.本稿では,自殺企図の手段として割合の高い急性薬物中毒患者の臨床における特徴から,精神科医療の役割や今後の自殺対策について検討した.
自殺企図で搬送される急性薬物中毒患者の特徴と精神科医療の役割
1)埼玉医科大学医学部精神医学
2)北里大学医学部精神科学
3)福岡大学大学院社会医学系専攻
2)北里大学医学部精神科学
3)福岡大学大学院社会医学系専攻
精神神経学雑誌
125:
860-867, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-122
https://doi.org/10.57369/pnj.23-122
<索引用語:急性薬物中毒, 精神科医の役割, COVID-19, 自殺企図, 心理・社会的介入>