向精神薬により便秘症の発症リスクが上昇する可能性が指摘されているが,向精神薬内服中の患者の便秘症に関する質の高い研究は不足している.今回われわれは,昭和大学横浜市北部病院の精神科救急病棟に入院した患者1,696例の診療録より,最終処方における緩下剤使用率を集計した.これらの患者を緩下剤あり群と緩下剤なし群に分け,患者背景,薬物療法の違いについて統計学的検討を行った.薬剤の投与量の指標として,各薬剤の添付文書上の上限を1とした場合の投与量の比を臨床用量比と命名し,使用した.多変量ロジスティック回帰分析の結果から,高齢,女性,入院回数が多いこと,在棟日数が長くなること,薬剤のカテゴリーでは抗パーキンソン薬,従来型抗うつ薬,新規抗うつ薬,気分安定薬,ベンゾジアゼピン系睡眠薬の投与量が緩下剤使用と関連している可能性が示された.薬剤別には,クエチアピン,レボメプロマジン,ベンラファキシン,ミルタザピンの投与量が緩下剤使用と関連している可能性が示された.
精神科救急病棟における緩下剤使用に関連する因子の検討
1)昭和大学横浜市北部病院メンタルケアセンター
2)昭和大学医学部精神医学講座
3)医療法人高仁会戸田病院
4)昭和大学附属藤が丘病院精神神経科
5)昭和大学附属烏山病院
2)昭和大学医学部精神医学講座
3)医療法人高仁会戸田病院
4)昭和大学附属藤が丘病院精神神経科
5)昭和大学附属烏山病院
精神神経学雑誌
125:
844-859, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-121
受理日:2023年5月18日
https://doi.org/10.57369/pnj.23-121
受理日:2023年5月18日
<索引用語:便秘症, 緩下剤, 向精神薬, 副作用, 精神科救急>