Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第124巻第7号

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症例報告
免疫療法が著効し,髄液中の抗グルタミン酸受容体抗体が陽性であった小児自己免疫性溶連菌感染関連性精神神経障害が疑われた1例
青井 駿1), 梅原 英裕1), 郷司 彩2), 森 達夫2), 東田 好広2), 高橋 幸利3), 大森 哲郎4)
1)徳島大学病院精神科神経科
2)徳島大学病院小児科
3)静岡てんかん・神経医療センター
4)医療法人あいざと会藍里病院
精神神経学雑誌 124: 447-456, 2022
受理日:2022年4月11日

 小児自己免疫性溶連菌感染関連性精神神経障害(PANDAS)が疑われた1例を報告する.症例は10歳代半ばの男児.音声チック,運動チック,および強迫症状が急激に出現・増悪し,会話,食事や入浴などの日常活動に著しい困難をきたしたため精神科を受診し,入院となった.血液検査,頭部MRI,脳血流SPECT,脳波検査,髄液一般検査および髄液各種ウイルス抗体検査において異常所見を認めなかった.髄液中オリゴクローナルバンドが陽性(髄液バンド2本)と判明した段階で病歴を再聴取したところ,症状出現1~2週前に咽頭痛と大量の鼻汁があったことと周囲で溶連菌感染が流行していたことが確認された.感染を契機に出現し増悪したチック症状と強迫症状という経過からPANDASを疑い,免疫グロブリン大量療法(IVIG)を行った.初回治療では症状の改善は認めなかったが,オリゴクローナルバンドが陰性化(髄液バンド1本)していたことから,脳の炎症には効果があったと判断し,2回目のIVIGとステロイドパルス療法も併せて行った.ここで迅速な症状改善を認めたため,続けて2度目のステロイドパルス療法を行ったところ,日常会話が普通にでき,食事や入浴にも時間がかからなくなった.3度目のステロイドパルス療法により,チック症状および強迫症状はほぼ完全寛解し,退院となった.X+1年12月に,一時的に軽度のチック症状と強迫症状が出現することがあったが,重症化せず,3ヵ月ほどで改善した.さらに1年後,再びチック症状と強迫症状が出現し,同様にステロイドパルス療法,IVIGを行い,その2ヵ月後に症状の改善がみられた.PANDASの診断のためには溶連菌感染歴に着目した病歴聴取と髄液の免疫学的検査が重要であり,治療にはステロイドパルス療法を含む免疫療法が有用である可能性が示唆された.

索引用語:小児自己免疫性溶連菌感染関連性精神神経障害, チック症候群, 強迫性障害, 免疫療法>
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