Advertisement第116回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第122巻第7号

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総説
軽度アルツハイマー型認知症および軽度認知障害への精神療法の試み―支持的精神療法と森田療法を用いて―
繁田 雅弘, 稲村 圭亮
東京慈恵会医科大学精神医学講座
精神神経学雑誌 122: 499-508, 2020

 軽度アルツハイマー型認知症(AD)や軽度認知障害(MCI)の人を対象として支持的精神療法や外来森田療法を試行した.多くのADの人は症状の進行に対して不安や恐れを,またMCIの人は認知症の発症に対して同じく不安や恐れを有している.また不安や恐れだけでなく妄想や抑うつ気分などのさまざまな精神症状を伴うことも少なくない.これらの多様な症状は認知機能低下を基盤として二次的に生じるものが多く,また状況因ないし環境因によって修飾されやすいことから,了解できる部分が多いと考えられ,そうした精神症状には支持的精神療法が有効ではないかと考えられた.認知機能低下に伴う了解可能な精神症状は個人差も大きく多岐にわたるが,治療の標的を特定の病態に絞るのではなく,自導感情や自己効力感を高めることで現実検討能力や感情調節能力を高め,それにより自分がおかれている状況をより的確に把握するようになることで適応能力を高められるのではないかと考えられた.一方,森田療法もADやMCIの人の不安や恐れに対しての有効性が期待された.まず認知症に罹患しているかもしれないという不安を(MCI),あるいは認知症が進行するかもしれないという不安を(AD),あって当然の感情としてあるがままに受容することを促すところから始めた.不安や恐れによって変化してしまったライフスタイルを見直すところがポイントである.不安や恐れの感情から中断していた習慣を再開し,不安から始めてしまった「はからい」を見直すことは,認知症疾患やその疑いの人でも十分に可能であった.以上,軽度ADの人やMCIの人に支持的精神療法や森田療法を行うことで精神症状の軽減や残存機能の行使が可能になると考えられる.

索引用語:支持的精神療法, 森田療法, 自尊感情, 自己効力感, 残存機能>
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