Advertisement第116回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第121巻第6号

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資料
出産・育児を経験した日本の女性精神科医の,医師として活動するための対処行動とニーズに関する質的研究
布施 泰子
茨城大学保健管理センター
精神神経学雑誌 121: 457-472, 2019
受理日:2019年1月19日

 日本では,出産・育児をきっかけに離職したり,何年も短時間の非常勤勤務を続けたりする女性医師が多数存在し,精神科医も例外ではない.高い志をもって医師になった女性が,なぜこのような状況になるのかを明らかにし,解決策を探るため,インタビュー調査を行った.出産・育児を経験した女性精神科医14名に調査への参加を依頼した.対象は機縁法(知人の紹介などによって対象者を選ぶ方法)によって選出した.インタビューは,半構造化面接(質問の概要をあらかじめ決めておくが,自由な応答を求める面接方法)の形をとった.データは質的データの分析ソフトMAXQDA12を利用して分析し,コードの抽出とカテゴリーの生成を行った.11名分のデータが得られた.分析結果から,出産・育児を経験した女性精神科医は,熱意をもって職務にあたり,周囲に気遣いをしつつ,多様な対処行動をとっていることが明らかとなった.また,さまざまなニーズをもっていることがわかった.なかでも,子どもが急に病気になったときの保育者の確保は困難で,自身や配偶者の親に頼っていることが多いという現状があり,そこには将来の課題が残されている.女性精神科医が保育の確保や働き方において困難を感じる背景には,性別役割分業意識の存在が大きいことも明らかとなった.一方で,精神科は,出産などによるブランクがあっても,比較的復帰しやすい科である.また,年齢や体力の変化に伴って,診療スタイルをあまり変えなくてもよい.さらに,病院以外での多様な仕事が比較的得やすい.このようなアドバンテージがあるという点では,女性医師にとって有利な診療科であると考えられる.精神医療界での「男女共同参画」が実現し,男女双方にとって無理のない形で継続していくためには,多くの課題が残されている.本研究が,課題解決の端緒となることを期待する.

索引用語:女性精神科医, ジェンダー, 対処行動, ニーズ, アドバンテージ>
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