Advertisement第116回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第121巻第6号

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総説
神経症概念の遺産をわれわれはどう受け継ぐか―精神病との対比,心的外傷の身分,不安の問題―
新宮 一成
奈良大学社会学部心理学科
精神神経学雑誌 121: 433-444, 2019

 神経系に由来すると考えられる諸疾患にとっての傘的概念として機能してきた神経症概念は,いまや公式に取り払われつつある.その後は神経症圏の疾病概念は細分化の方向で扱われるようであるが,他方では,その欠を補うべく新たな包括原理が求められてもおかしくない.神経発達症群の概念によって,発達の時間軸がDSM-5で強く打ち出されていることは,通時的な軸でそうした包括性を確保しようとする動きの表れであるように思われる.神経症概念は,精神疾患がどのようなものであるのかを一般社会に発信しつつ,逆にそれを越えた精神病なるものの存在を社会に伝えるための梃子にもなっていたが,この二分法が失われれば,精神病概念も単に身体に基礎づけられるというのみでなく,新たに捉え直されなければならないであろう.神経発達症群が通時的な軸でまとめられるとすれば,精神病は神経系の病的な発達のある段階での収束形態の1つということになるからである.また諸々の神経症圏の疾患は,元来不安という概念を通じて緩やかなまとまりを保っていたが,神経発達症群のASDやADHDにおいても不安の表出が重要であることを鑑みれば,神経発達症は,不安という共通項を通じて従来の神経症と総合される可能性を有している.その際,不安と心的外傷論は,相まってその総合に1つの発達時間軸を賦与しうるのではないかと考えられる.

索引用語:神経症, 神経発達症, 不安, 心的外傷, 事後性>
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