Advertisement第115回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第121巻第2号

※会員以外の方で全文の閲覧をご希望される場合は、「電子書籍」にてご購入いただけます。
総説
精神障害者の「働きたい」を実現するために―IPS個別就労支援の効果と可能性―
林 輝男
社会医療法人清和会西川病院
精神神経学雑誌 121: 91-106, 2019

 リカバリーは精神医療の新たな治療・支援ゴールとして位置づけられているが,就労はリカバリーの実現に必要な要素をくまなく含んでいる人間の基本活動であり,リカバリーにコミットしたいと願う治療者・支援者にとって,最も有効で効率的な介入対象である.昨今精神障害者の就労意欲は急激に高まっているが,現行の保護的環境下で段階的に訓練し就労へつなげるという,いわゆるtrain-place(train=訓練,place=職業斡旋)モデルを基本とした就労支援では,このニーズの高まりに十分に応えることは困難である.一方,Individual Placement and Support(IPS)は,place-trainモデルを基本とし,訓練を経ずに直ちに一般就労をめざす支援である.IPSは諸外国ですでに導入されているが,その特徴は,①一般就労率を絶対的アウトカム評価値とすることで,支援の諸条件を科学的に評価することを可能にしたevidence-based practiceであること,②地域をベースにした個別支援で,従来の就労支援と比較し一般就労率を2倍以上に引き上げる効果があること,③一般就労にて,精神障害者が分離されることなく,また過剰に庇護されない環境で,効率よくリカバリーを促進させることを目標としていることが挙げられる.支援の質は25項目からなるフィデリティ評価尺度で点数化でき,客観的評価と継続的品質改善が可能となっている.著者らはIPSの原則を遵守した支援を島根県浜田市で実践しているが,米国と同等の50%前後の一般就労率を安定して実現している.IPSの効果は他にも,支援者の意識改革,組織風土の変化,従来の就労支援利用者の一般就労への移行促進,従来の就労支援に興味を示さなかった者の支援への参画,職場を通じた一般市民の障害理解の深まりなど多彩である.本邦ではIPSを保障する制度はまだ未整備であるが,社会との共生を促す真に実効性のある支援を実現するには,医療との一体化,迅速で継続的な個別対応,地域企業の活用などの諸要素を含むIPSの実践は不可欠と考える.

索引用語:IPS, 援助付き雇用, 就労支援, リカバリー, 一般雇用>
Advertisement

ページの先頭へ

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology